中間値の定理の証明・改

高木『解析概論』の中間値の定理の証明が理解しづらかったため、書き直した。

同じ目的で
中間値の定理の証明 - y_bonten's blog
を書いていたが、これも煩雑であったので改良した。

【定理】(中間値の定理)\(a < b\)とする。区間\([a,b]\)において連続な関数\(F(x)\)について、\(F(a) < 0, F(b) > 0\)が成り立つとき、\(F(c)=0\)なる\(c\in(a,b)\)が存在する。

(証明)\(X=\{\xi\in[a,b]\mid\forall x\in[a,\xi]\ [F(x) < 0]\}\)とすれば、\(X\)は以下の性質を満たしている。
(1)\(a\in X,b\notin X\)
(2)\([a,b]\)において下に閉じている。
(3)最大元を持たない。

(1)(2)は\(X\)の定義から直ちに言える。(3)は、任意の\(p\in X\)に対し、\(p\in[a,b),F(p) < 0\)と\(F\)の連続性から、\(p\)のじゅうぶん小さな右近傍で\(F(x) < 0\)となり、\(p < q\)なる\(q\in X\)が存在することから従う。

以上により\([a,b]\)は、\(X\)と「\([a,b]\)における\(X\)の上界全体」とに切断されており、各々\(a,b\)を要素に持つ。\(\mathbb{R}\)の完備性により\(X\)は最小上界\(c\)(ただし\(c\in(a,b]\))を持ち、\([a,c)\subseteq X\)かつ\(c\notin X\)であるから\(F(c)\geq0\)である。

\(F(c) > 0\)と仮定すると矛盾することを示す。このとき、\(c\in(a,b]\)と\(F\)の連続性から、\(c\)のじゅうぶん小さな左近傍で\(F(x) > 0\)となる。すると\(d < c\)なる\(d\in[a,b]\backslash X\)が存在することになり、これは\(c\)が\(X\)の最小上界であることに反する。

以上により\(F(c)=0\)であり、\(F(b) > 0\)から\(c\neq b\)、これと\(c\in(a,b]\)から\(c\in(a,b)\)である。■

キューネン数学基礎論p46、演習I.7.21

\(R\)が\(A\)を整列順序づけすることから\[\forall x,y,z\in A[xRy\wedge yRz\rightarrow xRz]\]\[\forall x,y\in A[x=y,xRy,yRxのうちちょうどひとつが成立する]\]\[\forall Y\subseteq A\exists y\in Y\neg\exists z\in Y[zRy]\]が成り立つ。\(X\subseteq A\)のとき、上記の\(A\)を\(X\)に書き換えたものがすべて成立するから、\(R\)は\(X\)を整列順序づける。

キューネン数学基礎論p151、演習問題II.7.5

\(\mathfrak{A}\)を語彙\(\mathcal{L}\)に対する構造とし、その台集合を\(A\)とする。\(\mathcal{L}\)の項\(\tau\)に対し、「\(\tau\)に対する\(A\)への任意の割り当て\(\sigma',\sigma\)について、\(\sigma'\upharpoonright V(\tau)=\sigma\upharpoonright V(\tau)\)ならば\({\rm val}_\mathfrak{A}(\tau)[\sigma']={\rm val}_\mathfrak{A}(\tau)[\sigma]\)」という条件を\(\varphi(\tau)\)と置く。帰納法により\(\mathcal{L}\)の任意の項\(\tau\)について\(\varphi(\tau)\)が成り立つことを示す。

(1)\(\tau\in VAR\)のとき:\(\tau\)に対する\(A\)への割り当てで、\(\sigma'\upharpoonright V(\tau)=\sigma\upharpoonright V(\tau)\)を満たす任意の\(\sigma',\sigma\)をとる。\({\rm val}_\mathfrak{A}(\tau)[\sigma']=\sigma'(\tau)\)、\({\rm val}_\mathfrak{A}(\tau)[\sigma]=\sigma(\tau)\)であるが、\(\tau\in V(\tau)\)により両者は等しい。
(2)\(\tau\in\mathcal{F}_0\)のとき:(1)と同様に\(\sigma',\sigma\)をとると、\({\rm val}_\mathfrak{A}(\tau)[\sigma']\)も\({\rm val}_\mathfrak{A}(\tau)[\sigma]\)も共に\(\tau_\mathfrak{A}\)に等しい。
(3)\(n > 0\)に対し\(f\in\mathcal{F}_n\)かつ項\(\tau_0,\dots,\tau_{n-1}\)がすべて\(\varphi\)を満たすと仮定し、\(\tau=f\tau_0\ldots\tau_{n-1}\)も\(\varphi\)を満たすことを導く:(1)と同様に\(\sigma',\sigma\)をとると、これらは\(\tau_0,\dots,\tau_{n-1}\)のいずれに対しても\(A\)への割り当てとなっており、またどの\(\tau_i\)についても\(\sigma'\upharpoonright V(\tau_i)=\sigma\upharpoonright V(\tau_i)\)が成り立っているから、\(\varphi(\tau_i)\)により\({\rm val}_\mathfrak{A}(\tau_i)[\sigma']={\rm val}_\mathfrak{A}(\tau_i)[\sigma]\)である。すると\({\rm val}_\mathfrak{A}(\tau)[\sigma']\)および同\([\sigma]\)はその定義から等しくなる。■

小数表示と実数

有理数の切断によって実数を構成したとする。任意の小数表示に対して、「それによって表される実数」が存在することを示す。一意性についての議論は省略する。

以下、切断\( (A,B)\)の下組\(A\)(最大元を持たない)を指して「切断」という。

有理数\(r\)に対して「\(r\)未満の有理数全体」という集合は\(\mathbb{Q}\)の切断となっている。これを\(\mathbb{Q}_{ < r}\)と書けば、\({\mathbb{Q}_{ < r}}^c\)(\(\mathbb{Q}_{ < r}\)の補集合、すなわち切断の上組)は最小元\(r\)を持ち、この切断を有理数\(r\)と同一視することになる。

ある小数表示が与えられたとき、その第\(n\)位までで打ち切ったものを\(a_n\)とし、\(a_n\)の第\(n\)位(末位)に\(1\)を加えたものを\(b_n\)とする。この小数表示によって表される実数が存在することを示すには、「任意の\(n\)に対し\(a_n\leq\alpha\leq b_n\)」を満たす実数\(\alpha\)が存在することを言えばよく、これは「任意の\(n\)に対し\(\mathbb{Q}_{ < a_n}\subseteq A\subseteq\mathbb{Q}_{ < b_n}\)」を満たす\(\mathbb{Q}\)の切断\(A\)が存在することにほかならない。

\(\displaystyle A=\bigcup_{k\in\mathbb{N}}\mathbb{Q}_{ < a_k}\)とおき、任意の\(n\)をとる。\(A\)の定義から\(\mathbb{Q}_{ < a_n}\subseteq A\)である。また\(b_n\)はどの\(a_k\)よりも大きいから、\(A\)の任意の要素\(x\)について、ある\(k\)によって\(x < a_k < b_n\)と書かれるので\(x\in\mathbb{Q}_{ < b_n}\)、したがって\(A\subseteq\mathbb{Q}_{ < b_n}\)である。

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有理数の切断によって構成した実数は、確かに切断公理を満たす

【定義】「\(\mathbb{Q}\)の切断」とは、以下をすべて満たす\(B\)をいう。
・\(\varnothing\subsetneq B\subsetneq\mathbb{Q}\)
・\(B\)は最大元を持たない
・\(\forall x\in B\forall y\in B^c[x < y]\)

有理数\(r\)に対し、「\(r\)未満の有理数全体」なる集合を\(\mathbb{Q}_{ < r}\)で表す。これは\(\mathbb{Q}\)の切断になっている。

\(\mathbb{Q}\)の切断全体が成す集合\(\mathcal{C}(\mathbb{Q})\)は、\(\subsetneq\)に関して全順序集合をなしている(証明略)。

【定義】「\(\mathcal{C}(\mathbb{Q})\)の切断」とは、以下をすべて満たす\(\mathcal{A}\)をいう。ただし、\(\mathcal{A}^c\)は\(\mathcal{C}(\mathbb{Q})\backslash\mathcal{A}\)を表す。
・\(\varnothing\subsetneq\mathcal{A}\subsetneq\mathcal{C}(\mathbb{Q})\)
・\(\mathcal{A}\)は\(\subsetneq\)に関する最大元を持たない
・\(\forall X\in\mathcal{A}\forall Y\in \mathcal{A}^c[X\subsetneq Y]\)

【定理】\(\mathcal{C}(\mathbb{Q})\)の任意の切断\(\mathcal{A}\)について、\(\mathcal{A}^c\)は最小元を持つ。
(証明)\(\mathbb{Q}_{ < r}\in\mathcal{A}\)なる有理数\(r\)の集合を\(B\)とすると、\(B\)は\(\mathbb{Q}\)の切断になっている(証明略)。
任意の\(X\in\mathcal{A}\)をとり、さらに任意の有理数\(x\in X\)をとると、\(\mathbb{Q}_{ < x}\subseteq X\)より\(\mathbb{Q}_{ < x}\in\mathcal{A}\)ゆえ\(x\in B\)である。これが任意の\(x\in X\)で成り立つことから\(X\subseteq B\)、したがって\(B\)は\(\mathcal{A}\)の上界である。次に任意の\(Y\in\mathcal{A}^c\)と任意の\(y\in Y^c\)をとれば、\(Y\subseteq\mathbb{Q}_{ < y}\)より\(\mathbb{Q}_{ < y}\in\mathcal{A}^c\)ゆえ\(y\in B^c\)、これが任意の\(y\in Y^c\)で成り立つことから\(Y^c\subseteq B^c\)すなわち\(B\subseteq Y\)、したがって\(B\)は\(\mathcal{A}^c\)の下界でもある。\(\mathcal{A}\)は最大元を持たないから、\(B\)は\(\mathcal{A}^c\)の最小元となる。■

『Henle集合論』定理6.13

『Henle集合論』定理6.13の証明を書いてみた。

【定理】\( (B, < _B)\)を整列集合とする。ある順序数から\(B\)への、順序を保つ全単射が存在する。
(証明)整列集合\( (B, < _B)\)に対し、\(c\notin B\)なる\(c\)をとる。超限再帰的定義により、順序数全体のクラスを定義域とする関数クラス\(g\)を次のように定める。ただし、\(g[\alpha]\)は\(g\upharpoonright_\alpha\)の値域である。\[g(\alpha)=\begin{cases} {\rm min}(B\backslash g[\alpha]) & (B\nsubseteq g[\alpha]のとき) \\ c & (B\subseteq g[\alpha]のとき)\end{cases}\]上段では\(g(\alpha)\in B\)、下段では\(g(\alpha)\notin B\)となることに注意。
\(g(\mu)=g(\nu)\in B\)を仮定して\(\mu=\nu\)を導く。背理法により\(\mu < \nu\)とすると、\(g(\mu)\in g[\nu]\)である一方で\(g(\nu)\in B\backslash g[\nu]\)すなわち\(g(\nu)\notin g[\nu]\)となり矛盾する。\(\nu < \mu\)と仮定しても同様である。

上で示したことと置換公理から、\(\{\alpha\mid g(\alpha)\in B\}\)は集合をなすので、これを\(D\)とする。\(g\upharpoonright_D\)は置換公理により集合をなすが、これが所望の写像であることを示す。
・\(D\)が順序数であること:\(D\)は順序数のみからなるので整列順序をなしている。\(\mu < \nu\)のとき\(B\backslash g[\nu]\subseteq B\backslash g[\mu]\)だから、さらに\(\nu\in D\)であるならば左辺が非空ゆえ右辺も非空となり\(\mu\in D\)、したがって\(D\)は推移的集合である。
・\(g\upharpoonright_D\)が単射であること:すでに上で示されている。
・\(g\upharpoonright_D\)が順序を保つこと:\(\mu,\nu\)はともに\(D\)に属し\(\mu < \nu\)であると仮定する。すると\(g(\nu)\in B\backslash g[\nu]\subseteq B\backslash g[\mu]\)であり、最右辺の最小元\(g(\mu)\)は\(g(\nu)\)以下となる。これと\(g\upharpoonright_D\)の単射性から\(g(\mu) < _B g(\nu)\)を得る。
・\(g[D]=B\)であること:\(D\)の定義から\(g[D]\subseteq B\)である。また、\(D\)は順序数ゆえ\(D\notin D\)すなわち\(g(D)\notin B\)であるから\(B\subseteq g[D]\)である。■