分離集合による連結性の定義(1)

位相空間\(X\)における、\(A\subset X\)の閉包を\({\rm Cl}_X(A)\)で表す。

位相空間\(X\)が連結でない」とは、「\(X\)が2つの非空なる\(X\)の開集合の直和で表される」、すなわち「
(0)\(A\neq\varnothing,B\neq\varnothing\)
(1)\(A\cup B=X\)
(2)\(A\cap B=\varnothing\)
(3)\(A,B\)は\(X\)の開集合
をすべて満たす\(A,B\)が存在する」ことと定義されるのが通常である。ここでは、以下の「分離」という概念を用いた別の流儀を示し、その同値性を確かめる。

【定義】位相空間\(X\)において、その部分集合\(A,B\)が「分離している」とは、
(4)\(A\cap{\rm Cl}_X(B)=\varnothing\)かつ\({\rm Cl}_X(A)\cap B=\varnothing\)
が成り立つことである。

すなわち、単に交わらないだけでなく、一方だけを閉包にまで広げたとき、どちらを広げてもやはり交わらないという条件である。両方を閉包に広げて初めて交わることは禁止しない。

(1)のもとで、「(2)かつ(3)」と(4)が同値であることを示す。

(証明)「(2)かつ(3)」⇒(4):\(p\in A\)と仮定すると、(3)から\(p\)は\(A\)の内点、すなわち\(X-A\)の外点である。いま(2)から\(B\subset X-A\)であるので、\(p\)は\(B\)の外点でもある、つまり\(p\notin{\rm Cl}_X(B)\)である。したがって\(A\cap{\rm Cl}_X(B)=\varnothing\)となり、(4)の前半を得る。\(A\)と\(B\)を入れ替えれば(4)の後半も示される。■
(4)⇒「(2)かつ(3)」:(4)の前半と、閉包一般に成り立つ\({\rm Cl}_X(B)\supset B\)から、(2)が導かれる。これと(1)から\(A=X-B\)であり、(4)の前半は\((X-B)\cap{\rm Cl}_X(B)=\varnothing\)すなわち\({\rm Cl}_X(B)\subset B\)と書き直せる。これは\(B\)が\(X\)の閉集合であることを意味し、したがって\(A\)は\(X\)の開集合である。\(B\)についても同様に示されるので、(3)を得る。■

以上の考察により、「連結でない」の定義は「
(0)\(A\neq\varnothing,B\neq\varnothing\)
(1)\(A\cup B=X\)
(4)\(A\cap{\rm Cl}_X(B)=\varnothing\)かつ\({\rm Cl}_X(A)\cap B=\varnothing\)
をすべて満たす\(A,B\)が存在する」としてもよいことが分かる。