順序として/位相としての稠密性

【定義】(順序としての稠密性)全順序集合\(Y\)とその部分集合\(X\)について、\(a < b\)を満たす\(Y\)の任意の2要素\(a,b\)に対し、\(a < x < b\)なる\(x\in X\)が(そのつど)存在するとき、「\(X\)は\(Y\)において稠密である」という。特に\(Y\)自身が\(Y\)において稠密であることを「\(Y\)は自己稠密である」という。

【定義】(位相としての稠密性)位相空間\(Y\)の部分集合\(X\)が、任意の空でない\(Y\)の開集合と交わるとき、「\(X\)は\(Y\)において稠密である」という。

この条件は下のいずれとも同値である。
・\(X\)の\(Y\)における閉包が\(Y\)と一致する。
・\(Y\)の要素はすべて、\(Y\)における\(X\)の触点である。
・\(Y\)における\(X\)の外点が存在しない。

特に\(Y\)自身が\(Y\)において稠密であるとき、「\(Y\)は自己稠密である」……と呼びたいところであるが、これは任意の位相空間について成り立つので、わざわざそう呼ぶことはない。

順序としての稠密概念と位相としての稠密概念とはいかなる関係にあるのだろうか。

【定理】\(Y\)は一点集合でない自己稠密な全順序集合であるとする。\(Y\)に順序位相を入れたとき、\(Y\)の部分集合\(X\)が\(Y\)において「順序として稠密である」ことと「位相として稠密である」こととは同値である。

「順序位相」とは、全順序\(Y\)の開区間の和集合で表される集合全体を開集合系とした位相空間のことである。「\(Y\)の開区間」とは、基本開区間\(Y,\varnothing,\{x|a < x\},\{x|x < b\},\{x|a < x < b\}\)(ただし\(a,b\in Y\))およびその和集合で表される\(Y\)の区間のことである。「\(Y\)の区間」とは、\(Y\)の部分集合\(I\)で、\((x,y\in I\wedge z\in Y)\rightarrow z\in I\)を満たすもののことである。

(証明)\(X\)が順序として\(Y\)において稠密であると仮定し、位相としても稠密であること、すなわち\(Y\)の任意の空でない開集合が\(X\)と交わることを導く。そのためには\(Y\)の任意の空でない基本開区間が\(X\)と交わることを示せばよい。
・\(\varnothing\)
・\(\{x|a < x\}\):\(a\)が\(Y\)の最大元のとき、この集合は空である。そうでないときは\(a < b\)を満たす\(b\in Y\)が存在する。
・\(\{x|x < b\}\):\(b\)が\(Y\)の最小元のとき、この集合は空である。そうでないとき\(a < b\)を満たす\(a\in Y\)が存在する。
・\(\{x|a < x < b\}\):\(b\leq a\)のとき、この集合は空である。そうでないときは\(a < b\)である。
・\(Y\):\(Y\)は空集合でなければ少なくとも2つの要素を持つので、\(a,b\in Y\)(ただし\(a < b\))をとることができる。
いずれにせよ、上記のうち基本開区間が空にならないときは、順序としての稠密性の仮定から\(a < x < b\)を満たす\(x\in X\)が存在し、\(x\)は基本開区間と\(X\)の共通の要素となる。

逆に、\(X\)が位相として\(Y\)において稠密であると仮定し、順序としても稠密であることを示す。\(a,b\in Y\)(ただし\(a < b\))と仮定し、\(a < x < b\)かつ\(x\in X\)を満たす\(x\)が存在することを導く。\(\{x|a < x < b\}\)は\(Y\)の開区間であり空でないから、位相としての稠密性の仮定により、この集合は\(X\)と交わる。その共通の要素のひとつを\(x\)とすればよい。■

この定理において、順序集合としてはまず自己稠密な\(Y\)があって、「\(X\)が【その中で】稠密であるかどうか」が位相としての稠密性と対応していることに注意しよう。すなわち、順序として自己稠密であるかどうかの議論には使えないのである。上の定理の\(X\)に\(Y\)を入れても当たり前の命題しか出てこない。