Heine-Borelの被覆定理

\(\bf R\)についてのHeine-Borelの被覆定理、すなわち「閉区間の任意の開被覆は有限部分被覆を持つ」を、Weierstrassの上限公理から導く。

(証明)\(\mathcal U\)を閉区間\([a,b]\)の開被覆とする。\([a,b]\)の要素であって、しかも\([a,x]\)が\(\mathcal U\)の有限個の要素で覆えるような\(x\)の集合を\(X\)とし、\(b\in X\)を導く。
\(a\in[a,b]\)より、\(\mathcal U\)には\(a\)を要素に持つ開区間が少なくともひとつ存在し、そのひとつだけで\([a,a]\)を覆えるから\(a\in X\)である。したがって\(X\)は空でなく、また上界\(b\)を持つから、Weierstrassの上限公理により上限\(c\)を持つ。\(c\)が\(X\)の上界であることから\(a\leq c\)、また最小上界であることから\(c\leq b\)なので\(c\in[a,b]\)であり、それゆえ\(c\in V\in {\mathcal U}\)を満たす\(V\)が存在する。開区間\(V\)に対し\( (c-\epsilon,c+\epsilon)\subset V\)となる\(\epsilon > 0\)をとれば、\([a,c-\epsilon]\)は\(\mathcal U\)の有限個の要素で覆うことができる。なぜなら、もし覆えなければ、\(c-\epsilon\leq y\)なる任意の\(y\)について\([a,y]\)はやはり覆えず、\(c-\epsilon\)は\(X\)の上界となって\(c\)が最小上界であることに反するからである。すると、\([a,c-\epsilon]\)の有限被覆に\(V\)を付け加えることにより、\([a,c]\subset[a,c-\epsilon]\cup(c-\epsilon,c+\epsilon)\)を覆うことができる。よって\(c\in X\)である。
\(c < b\)と仮定して矛盾を導く。\(b-c\)と\(\epsilon\)のいずれよりも小さい\(\delta > 0\)をとると、\((c-\delta,c+\delta]\subset(c-\epsilon,c+\epsilon)\subset V\)かつ\(c+\delta\in[a,b]\)である。さきほどと同様に、\([a,c-\delta]\)は\(\mathcal U\)の有限個の要素で覆うことができるから、\(V\)を加えて\([a,c+\delta]=[a,c-\delta]\cup(c-\delta,c+\delta]\)も覆える。すると\(c+\delta\in X\)となり、これは\(c\)が\(X\)の上界であることに反する。以上より\(c=b\)、したがって\(b\in X\)である。■