赤集合論p167定理7

集合論p167定理7を、順序数の演算法則に頼ることなく証明したい。そのために、いったん上限の定義を整列集合や切片の概念に引きずりおろして翻訳しておき、その知識の範囲で完結するように証明を書き直す。

【準備】順序数を元とする(空でない)集合\(V\)について、\(\kappa\)が\(V\)の上限であるとは、以下の2つが同時に成り立つことである。ただし、\(K\)は\(\langle K\rangle=\kappa\)を満たす整列集合のひとつである。

上限性質(I):\(\kappa\)は\(V\)の上界のひとつである、すなわち任意の\(\tau\in V\)に対して、\(K\)自身あるいは\(K\)の切片のいずれかの順序数が\(\tau\)に等しい。

上限性質(II):\(\kappa\)より小さい順序数は\(V\)の上界でない。すなわち\(K\)の任意の切片に対し、「それを切片として持ち、順序数が\(V\)に属す整列集合」がそのつど存在する。これは上の上限性質Iのもとでは「\(\langle K\rangle\in V\)が成り立つか、さもなくば『任意の\(x\in K\)に対し、\(x < y\)かつ\(\langle K(y)\rangle\in V\)を満たす\(y\in K\)がそのつど存在する』」ということと同値である。

【定理7】順序数を元とする(空でない)集合\(W\)および順序数\(\alpha\)に対して\[\alpha+\sup W=\sup(\alpha+W)\]が成立する。ここで\(\sup W\)とは\(\sup_{\beta\in W}\beta\)を、また\(\alpha+W\)とは\(\{\alpha+\beta:\beta\in W\}\)を意味する。

【証明】順序数\(\alpha+\sup W\)が集合\(\alpha+W\)に対して上限性質(I)・(II)を満たすことを示す。\(\langle A\rangle=\alpha,\langle B\rangle=\sup W\)を満たす互いに素な整列集合\(A,B\)をとる。

上限性質(I):任意の\(\alpha+\beta\)(ただし\(\beta\in W\))に対し、\(A+B\)自身または\(A+B\)の切片のいずれかの順序数が\(\alpha+\beta\)に等しいことを示す。
\(\sup W\)の上限性質(I)から、\(\langle B\rangle=\beta\)が成り立つか、あるいは\(\langle B(b)\rangle=\beta\)なる\(b\in B\)がとれる。前者の場合は\(\langle A+B\rangle=\alpha+\beta\)であり、後者においては\( (A+B)(b)=A+(B(b))\)により、その順序数は\(\alpha+\beta\)である。

上限性質(II):\(\langle A+B\rangle\in\alpha+W\)が成り立つか、さもなくば「任意の\(c\in A+B\)に対し、\(c < d\)かつ\(\langle(A+B)(d)\rangle\in\alpha+W\)を満たす\(d\in A+B\)がそのつど存在する」ということを示す。
(ア)\(\langle B\rangle\in W\)のとき:\(\langle A+B\rangle\in\alpha+W\)である。
(イ)\(\langle B\rangle\notin W\)のとき:\(W\neq\varnothing\)および\(\sup W\)の上限性質(I)から、\(\langle B(d)\rangle\in W\)なる\(d\in B\)が存在する。\(c\in A\)の場合は、そのような\(d\)を任意にとれば\(c < d\)である。\(c\in B\)の場合は\(\sup W\)の上限性質(II)から、やはり\(c < d\)かつ\(\langle B(d)\rangle\in W\)なる\(d\in B\)がとれる。いずれにせよ\( (A+B)(d)=A+(B(d))\)から、その順序数は\(\alpha+W\)に属している。■