集合論勉強会のフィードバック(2)

(内輪で投稿されたノートに対するコメントのため、関係者以外には意味不明です。)


問4:空集合のケースに関する議論はOK。「空集合でないケース」の証明は、以下の事柄を暗黙に用いている:「\(B\)の元は含まれず\(A\)の元のみ含まれる集合」(\(C\)とする)と「\(B\)の元は含まれず\(A'\)の元のみ含まれる集合」(\(D\)とする)との間には「\(A\supseteq A'\)ならば\(C\supseteq D\)」が成り立つ……これは正しいだろうか?

例えば\(A\)を「2の倍数(偶数)全体」、\(A'\)を「4の倍数全体」、\(B\)を「3の倍全体」の集合とする。\(A\supseteq A'\)が成り立っており、確かに\(A-B=\{2,4,8,10,14,16,\ldots\}\)は\(A'-B=\{4,8,16,\ldots\}\)を包んでいる。しかし、「\(B\)の元は含まれず\(A\)の元のみ含まれる集合」というだけであれば、(確かに\(A-B\)もそのような集合のひとつであるが)例えば\(\{2,4,8,10\}\)といった集合でもよい。これは\(A'-B\)を包まない。このような反例があるため、この証明は正しいと認められない。「\(B\)の元は含まれず\(A\)の元のみ含まれる集合」のすべてが備えているわけではない(しかし\(A-B\)は備えている)何らかの性質を用いなければならないはずである(※それは何か?)

問5:問4に対して指摘したような問題点はクリアしている(※どこが違うのか?)。「何か足りない気がする」というのは、「直感的には明らかだがそれに頼っていいのかどうか」という不安感であると推測する。おそらく、\(A-B\)のほうが\(A-B'\)よりも「より大きく削られている」から、残ったものを比べると「小さい(包まれる)」はずと考えたのだと思う。そこをより正確に書けばよい。例えば、「\(B\supseteq B'\)により、\(A-B\)を作るために\(A\)から\(B\)の元をすべて取り去ったとき、\(B'\)の元はすべて取り去られているはずであり、その上さらに\(B'\)に属さないものまで取り去られているかもしれない。いっぽう、\(A-B'\)は\(A\)から\(B'\)の元をすべて取り去っただけのものである。したがって\(A-B\)を作って残るような要素であれば\(A-B'\)を作っても必ず残る。すなわち\(A-B\subseteq A-B'\)である。」など。

しかし、いずれにせよあまり明瞭な証明とは言い難い。もっと良い方法は、\(A-B\)の定義を「\(A\)に属し\(B\)に属さないものの集合」と読み替えることである。すると\(x\in A-B\)は「\(x\in A\)かつ\(x\notin B\)」の略記と考えることができる。こう考えれば、示すべき結論\(A-B\subseteq A-B'\)を「『\(x\in A\)かつ\(x\notin B\)』ならば『\(x\in A\)かつ\(x\notin B'\)』」と言い換えることができる。これを(\(B\supseteq B'\)のもとで)示せばよい。

問6:\(A=B=\varnothing\)は\(A-B=\varnothing\)の誤記か。

「\(B\)が\(A\)の元を全て含むか、\(B=A\)であれば良い」:\(B=A\)のときも、\(B\)が\(A\)の元を全て含むことに変わりはない。単に「\(B\)が\(A\)の元を全て含めば良い」でOK。ただ、「●であるためには、▲であればよい」という言い回しには「『▲ならば●』だが、『●ならば▲』は保証しない」というニュアンスがある。必要十分性を強調したければ、「……ので、\(A-B=\varnothing\)が成り立つことは、\(B\)が\(A\)の元を全て含むということにほかならない」などと書いたほうが良い。

問6も問5同様に言い換えると、\(A-B=\varnothing\)は「『\(x\in A\)かつ\(x\notin B\)』を満たす\(x\)が存在しない」、いっぽう\(A\subseteq B\)は「任意の\(x\)について『\(x\in A\)ならば\(x\in B\)』」となる。両者が同値であることをきちんと納得しよう。これは論理の問題として、集合論から切り離して考えることができる。

問7:おそらく著者の想定としてはp42定理2を用いて証明してほしかったのだろうと思う。

定義に従い、\(A\subseteq A\cup A\)および\(A\cup A\subseteq A\)を示す。

(\(A\subseteq A\cup A\)):定理2(1)において、たまたま\(B\)が\(A\)に等しい場合を考えると\(A\subseteq A\cup A\)が得られる。

(\(A\cup A\subseteq A\)):定理2(2)において、たまたま\(B,C\)がともに\(A\)に等しい場合を考えると「\(A\subseteq A\)ならば\(A\cup A\subseteq A\)」を得る。\(A\subseteq A\)は真であるから、\(A\cup A\subseteq A\)も成り立つ。

このように、すでに証明された定理を用いると「それらしい」証明になる。しかし、これはつまるところ「\(A\cup A\)は、\(A\)のすべての元と\(A\)のすべての元を集めたもの、要するに\(A\)のすべての元を集めたものだから、\(A\)に等しい」という以上のことを言っているわけではない。ノートの通りの証明でOKだと私は思う。

問8:問7同様。せっかくなので定理2を使って示してみてほしい。

問9:「『とりさったもの』とあるが『集合』と書いて正しいのか」:問題なし。

「個人的な補足説明」:証明の一部として書いてOKだと思う。

「\(P=Q\)」を示したいとき、「意味を考えると、\(P\)と\(Q\)が有する要素は完全に一致するから」という証明法と、定義に従って「\(P\subseteq Q\)かつ\(Q\subseteq P\)」、すなわち「『\(x\in P\)ならば\(x\in Q\)』かつ『\(x\in Q\)ならば\(x\in P\)』」を証明する方法とがある。前者はどうしても直感的な箇所ができてしまい、「これで証明になっているかどうか」という基準が曖昧になる。それは現段階であまり気にしても仕方ない。自分のとった方法と異なるほうの証明法も追究すると吉。

問10:(5)が分かりにくい。「\(A-B\)を作る際に失われた\(A\)の元は、\((A-B)\cup B\)を作ることによってすべて戻ってくる」ということを書けばよいと思う(それ以外に、\(A\)に属さない\(B\)の元も加わるが)。

必要十分条件を示せているのかギモン」:確かに、「\(A\subseteq B\)ならば\((A-B)\cup B=A\)」は示せているが、逆は示せていない。