切片関係について全順序をなす整列集合族の和集合は、この族の上界である

【定理】半順序集合\( (X, < )\)の部分集合で、\( < \)-整列集合であるもの全体を\(\mathcal W\)とする。\(\mathcal W\)の要素\(W_1,W_2\)について、「\(W_1\)が\(W_2\)の始切片になっている」という半順序関係を\(W_1\prec W_2\)で表す。\( (\mathcal W,\prec)\)の任意の部分全順序集合\(\mathcal V\)について、\(V_0=\bigcup\mathcal V\)は\(\mathcal V\)の\(\prec\)-上界となる。

(証明)次の補題を準備しておく。

補題】\(\mathcal V\)の任意の元\(V_1\)と、その任意の元\(v\)について、\(v\)より小さい\(V_0\)の元はすべて\(V_1\)に属す。
(証明)\(x\in V_0\)かつ\(x < v\)と仮定する。\(x\in V_2\in\mathcal V\)なる\(V_2\)がとれるが、\(V_2\preceq V_1\)のときは\(V_2\subseteq V_1\)から\(x\in V_1\)となる。\(V_1\preceq V_2\)のときは\(y\in V_2\)を用いて\(V_1=s_{V_2}(y)\)と書くことができ、\(v\in V_1\)から\(v < y\)である。すると\(x < v < y\)であるので\(x\in s_{V_2}(y)\)すなわち\(x\in V_1\)を得る。■

\(V_0\)が\( < \)-整列集合であること:まず\(V_0\)は\(X\)の\( < \)-全順序集合であることを示す。任意の\(x,y\in V_0\)について、\(x\in V_1, y\in V_2\)なる\(V_1,V_2\in\mathcal V\)が存在し、\(\mathcal V\)は\(\prec\)-全順序集合だから、\(V_1,V_2\)の少なくとも一方は他方を包含する。したがって\(x,y\)は同一の\( < \)-全順序集合に属すから\(<\)-比較可能である。

次に、\(V_0\)の任意の空でない部分集合\(B\)が\( < \)-最小元を持つことを示す。\(b\in B\)とし、\(v\in V\in\mathcal V\)なる\(V\)をとる。すると\(V\cap B\)は空でないから最小元\(b_0\)を持つ。この\(b_0\)が\(B\)の\( < \)-最小元でもあることを示す。\( < \)-全順序集合\(V_0\)の部分集合である\(B\)も\( < \)-全部分集合なので、\(B\)が\(b_0\)よりも小さい元を排除できていればよい。そこで、\(h < b_0\)なる任意の\(h\in X\)をとり、\(h\notin B\)を示す。\(h\notin V_0\)のとき、ただちに\(h\notin B\)を得る。\(h\in V_0\)のときは上の補題により\(h\in V\)であるが、いっぽう\(b_0\)の最小性から\(h\notin V\cap B\)、したがって\(h\notin B\)である。

\(V_0\)が\(\mathcal V\)の\(\prec\)-上界となること:\(V\in \mathcal V\)と仮定し、\(V\preceq V_0\)を導く。\(V_0\)の定義から\(V\subseteq V_0\)であるが、\(V=V_0\)のときは確かに\(V\preceq V_0\)である。\(V\subsetneq V_0\)のとき、\(V_0\backslash V\)は\( < \)-整列集合\(V_0\)の空でない部分集合であるので、\( < \)-最小元\(p\)を持つ。以下、\(V=s_{V_0}(p)\)を示すことにより\(V\prec V_0\)を導く。\(x\in s_{V_0}(p)\)すなわち\(x\in V_0\)かつ\(x < p\)と仮定すると、\(p\)の最小性から\(x\notin V_0\backslash V\)、したがって\(x\in V\)。逆に\(x\in V\)と仮定すると、\(x\)と\(p\)はともに\(V_0\)の要素なので比較可能であるが、\(p\notin V\)から\(x\neq p\)であり、また\(p < x\)の可能性も上の補題から排除される。したがって\(x < p\)であり、\(x\in s_{V_0}(p)\)を得る。■