完備全順序における開区間は基本開区間である

齋藤正彦『数学の基礎』p34、第1章§3問題6-1の解答を自分で書いてみた。

補題1】\(A\)は全順序集合\( (X, < )\)の基本開区間の合併で表される集合で、最小元\(p\)を持つとする。\(p\)が\(X\)の最小元でないとき、\(p\)の「左隣の」元、すなわち\(p^- < p\)かつ\(\neg\exists x\in X[p^- < x < p]\)を満たす\(p^-\in X\)が存在する。
(証明)\(\{x\in X\mid x < p\}\)を\(P\)と置けば、\(P\neq\varnothing\)かつ\(P\cap A=\varnothing\)である。\(A\)を基本開区間の合併として書いたとき、そこに\(X\)が入っていれば\(P\)と交わってしまう。また\(x < b\)型のもの\(B\)が入っていれば、\(p\)と\(b\)の大小にかかわらず、\(P\)と\(B\)の少なくとも一方が他方を包含する。いま\(P\neq\varnothing\)であったので、\(B\)が\(P\)と交わるのを避けるには\(B=\varnothing\)でなければならない。以上により\(A\)は、左端を持つ基本開区間(\(a < x\)型および\(a < x < b\)型)のみによる合併として書き表せる。もしもこれらの左端がすべて\(p\)以上だとすると\(p\in A\)に反するから、\(p\)より小さい左端\(p^-\)を持つ基本開区間が入っている。もしも\(p^-\)と\(p\)の間に元が存在すれば、それは\(P\)と\(A\)に共有されることとなって矛盾するから、\(p^-\)は\(p\)の「左隣の」元である。■

同様にして、\(X\)の基本開区間の合併で表される集合が最大元\(q\)を持つとき、\(q\)は\(X\)の最大元であるか、さもなくば「右隣の」元\(q^+\in X\)を持つ。

補題2】全順序集合\( (X, < )\)において、基本開区間に登場する任意の不等号を「\( < \)」から「\(\leq\)」に変えたもの、すなわち\(\{x\in X\mid a\leq x\leq b\},\{x\in X\mid a\leq x < b\},\)\(\{x\in X\mid a < x\leq b\},\{x\in X\mid a\leq x\},\{x\in X\mid x\leq b\}\)は、それが基本開区間の合併で表されるならば、単一の基本開区間に書き直すことができる。
(証明)\(\{x\in X\mid a\leq x\leq b\}\)は、\(a > b\)のとき空集合となる。\(a\leq b\)のとき、\(a,b\)は各々この区間の最小元・最大元となる。すると、\(a\)が\(X\)の最小元か否か、\(b\)が\(X\)の最大元か否かによって、補題1からこの区間は\(\{x\in X\mid a^- < x < b^+\},\{x\in X\mid x < b^+\},\{x\in X\mid a^- < x\},X\)のいずれかに等しくなり、いずれも基本開区間である。他のものについても同様である。■

補題2から次の定理(この問題の解答)を得る。なお、「(区間の定義から)区間の下界でも上界でもないものはその区間に属す」ということを用いるので先に注意しておく。

【定理】\(A\)は全順序集合\((X, < )\)における開区間であるとする。\(X\)が下限性質・上限性質を備えるとき、\(A\)は\(X\)の基本開区間である。
(証明)\(A=\varnothing\)のとき、これは基本開区間である。以下では\(A\neq\varnothing\)とする。
(1)\(A\)が下界・上界をともに持つとき:\(X\)の下限性質・上限性質から、\(A\)は下限\(p\)および上限\(q\)を持つ。任意の\(x\in X\)をとると、\(x < p\)または\(q < x\)のとき\(x\notin A\)、また\(p < x < q\)のとき\(x\)は\(A\)の下界でも上界でもないから\(x\in A\)である。したがって、あとは\(p,q\)が\(A\)に属すかどうかによって\(A\)が定まる。例えば\(p\in A\)かつ\(q\notin A\)ならば\(A=\{x\in X\mid p\leq x < q\}\)となる。どの場合についても補題2から\(A\)は基本開区間である。
(2)\(A\)が下界を持つが上界を持たないとき:\(A\)は下限\(p\)を持つ。任意の\(x\in X\)をとると、\(x < p\)のとき\(x\notin A\)、また\(p < x\)のとき\(x\)は\(A\)の下界でも上界でもないから\(x\in A\)である。したがって\(A=\{x\in X\mid p < x\}\)あるいは\(A=\{x\in X\mid p\leq x\}\)となり、いずれにせよ基本開区間である。
(3)\(A\)が下界を持たないが上界を持つとき:(2)と同様である。
(4)\(A\)が下界も上界も持たないとき:任意の\(x\in X\)について、\(x\)は\(A\)の下界でも上界でもないから\(x\in A\)である。したがって\(A=X\)であり、これは基本開区間である。■