小数表示と実数

有理数の切断によって実数を構成したとする。任意の小数表示に対して、「それによって表される実数」が存在することを示す。一意性についての議論は省略する。

以下、切断\( (A,B)\)の下組\(A\)(最大元を持たない)を指して「切断」という。

有理数\(r\)に対して「\(r\)未満の有理数全体」という集合は\(\mathbb{Q}\)の切断となっている。これを\(\mathbb{Q}_{ < r}\)と書けば、\({\mathbb{Q}_{ < r}}^c\)(\(\mathbb{Q}_{ < r}\)の補集合、すなわち切断の上組)は最小元\(r\)を持ち、この切断を有理数\(r\)と同一視することになる。

ある小数表示が与えられたとき、その第\(n\)位までで打ち切ったものを\(a_n\)とし、\(a_n\)の第\(n\)位(末位)に\(1\)を加えたものを\(b_n\)とする。この小数表示によって表される実数が存在することを示すには、「任意の\(n\)に対し\(a_n\leq\alpha\leq b_n\)」を満たす実数\(\alpha\)が存在することを言えばよく、これは「任意の\(n\)に対し\(\mathbb{Q}_{ < a_n}\subseteq A\subseteq\mathbb{Q}_{ < b_n}\)」を満たす\(\mathbb{Q}\)の切断\(A\)が存在することにほかならない。

\(\displaystyle A=\bigcup_{k\in\mathbb{N}}\mathbb{Q}_{ < a_k}\)とおき、任意の\(n\)をとる。\(A\)の定義から\(\mathbb{Q}_{ < a_n}\subseteq A\)である。また\(b_n\)はどの\(a_k\)よりも大きいから、\(A\)の任意の要素\(x\)について、ある\(k\)によって\(x < a_k < b_n\)と書かれるので\(x\in\mathbb{Q}_{ < b_n}\)、したがって\(A\subseteq\mathbb{Q}_{ < b_n}\)である。