Nにおける∈の整礎性

\(N\)における∈の整礎性を、通常の帰納法で示す。\(N\)が順序をなす議論から独立して話を進めたいので、「\(\in\)極小元」といった語の代わりに、下のような語を用いる。
【定義】\(S\)が\(\neg\exists x\in S[x\in t]\)なる要素\(t\)を持つとき、\(t\)を\(S\)の\(\in\)左終端と呼ぶ。

【定理】\(N\)の非空部分集合は\(\in\)左終端を持つ。
(証明)\[\alpha(n):n\in S\subseteq Nを満たす任意のSが\in左終端を持つ\]とおき、\(\forall n\in N[\alpha(n)]\)を示せばよい。さらに\[\beta(n):\forall k\in n'[\alpha(k)]\]とおく。\(n\in n'\)により、各\(\beta(n)\)は\(\alpha(n)\)を含意するので、\(\forall n\in N[\beta(n)]\)を帰納法で証明することにする。まず\(\beta(\varnothing)\)は\(\alpha(\varnothing)\)のことであるが、\(\varnothing\in S\subseteq N\)を満たす任意の\(S\)は\(\varnothing\)を\(\in\)左終端に持つことから、これは成立する。次に\(\beta(n)\)を仮定して\(\beta(n')\)を導くが、\(n''=n'\cup\{n'\}\)により、\(\alpha(n')\)さえ導ければよい。そこで、\(n'\in S\subseteq N\)を満たす任意の\(S\)をとる。\(r\in n'\)かつ\(r\in S\)なる\(r\)が存在するとき、\(\beta(n)\)により\(\alpha(r)\)が成立するので、\(S\)は\(\in\)左終端を持つ。そのような\(r\)が存在しないときは、\(n'\)が\(S\)の\(\in\)左終端となる。■