20180422集合と位相ゼミの補足

(※内輪向けのメモです。)
二項関係を初めて理解する際は、まずは最も素朴に二次元の表をイメージしておくのが良いと思います。
例えば\(X=\{グー,チョキ,パー\}\)として、関係\(aRb\)を「\(a\)が\(b\)に勝つ」とすると、その実体は\(R=\{(グー,チョキ),(チョキ,パー),(パー,グー)\}\)という、\(X\times X\)の部分集合です。こう定めておくことにより、\(aRb\Leftrightarrow (a,b)\in R\)と考えることができます。

a \ b グー チョキ パー
グー
チョキ
パー

この例では\(X\)のサイズが\(3\)なので表のマスは\(3\times 3=9\)個あり、●の付け方は\(2^9=512\)通りあります。それらの中には「\(a\)が\(b\)に勝つ」のように、●の付け方のルールが簡単に表現できるものもありますが、ワケの分からないところに●が付いているものもたくさんあります。それらのひとつひとつはいずれも二項関係と呼んでよい、ということに注意してください。すべてのマスに●が付いているものも、●が全く付いていないものも、\(X\)上の二項関係のひとつです。

・「前提を伴った定義文」の実例について考えてみました。たとえば「\(X,Y\)をベクトル空間とする。\(X\)から\(Y\)への写像\(f\)が(略)を満たすとき、\(f\)を『\(X\)から\(Y\)への線形写像』という。」という定義があって、その後で\(U,V\)に関する前置きなく「\(g\)を\(U\)から\(V\)への線形写像とする」という仮定が書いてあったとします。このときは「\(U,V\)はベクトル空間なのだな」と補って読んでやるしかありませんが、あまり良くない書き方だと思います。やはり、文脈上すでに\(U,V\)がベクトル空間として登場しているとか、直前に「\(U,V\)をベクトル空間とし、」といった文言を書くのが通例です。

・「\(f\)を\(X\times Y\)の部分集合と思ったとき」というのは、いま読んでもやはり「『思ったとき』も何も、まさに部分集合として定義しているじゃないか」と感じてしまいますが、誰もがそのような集合論的コーディングを意識するわけではないので、ここは「部分集合であることを強調したいとき」というくらいの意味で捉えればよいと思います。実際、集合論ではわざわざ\(\Gamma_f\)など導入せずに\( (x,y)\in f\)と書いているものを普通に見かけますが、著者にとっては違和感があったのでしょう。

・p19の問5(2)に対して、「結局\(h(g(f(x)))\)と書くのなら、グラフを用いてもたいして説明は変わらないのでは」という話が出ました。(1)は\(\{(x,z)\in X\times Z\mid\exists y\in Y[(x,y)\in\Gamma_f\wedge(y,z)\in\Gamma_g]\}\)と書くこともできます。(2)も同様に書けば\((h\circ g)\circ f\)と\(h\circ (g\circ f)\)が一致するので両写像は等しい、というのが著者の意図だったのではないでしょうか。

・みんなで少し詰まった「単射\(f:X\to Y\)において\(x\notin A\)ならば\(f(x)\notin f[A]\)」の証明、次のように書くのはどうでしょうか。
「\(x\notin A\)と仮定する。任意の\(x'\in A\)に対し、\(x\neq x'\)と\(f\)の単射性から\(f(x)\neq f(x')\)である。すなわち、\(f(x)\)は\(f[A]\)のどの要素とも等しくならない。したがって\(f(x)\notin f[A]\)である。」