コンパクト集合と閉集合の交叉性と集合間距離

【問題】距離空間における部分集合\(K,L\)が、次の条件を満たしている。
・\(K\)は点列コンパクトである。
・\(d(K,L)=0\)である。
このとき、\(K\)と\({\rm Cl}(L)\)は交わることを示せ。

(証明)\(d(K,L)=0\)から、任意の\(\epsilon > 0\)に対し、開球\(B(x,\epsilon)\)が\(L\)と交わるような\(x\in K\)が\(\epsilon\)ごとに存在する。そこで、\(B(x_n,1/n)\)がすべて\(L\)と交わるような\(K\)の点列\(x_n\)(\(n=1,2,\ldots\))を作る。[#]\(K\)の点列コンパクト性のもとで\(x_n\)の収束部分列をひとつとり、その収束先を\(k\in K\)とする。この\(k\)が\(K\)と\({\rm Cl}(L)\)の共通元であること(すなわち\(k\)が\(L\)の触点であること)を示すために、任意の\(\epsilon > 0\)をとり、\(B(k,\epsilon)\)が\(L\)と交わることを導く。\(2/\epsilon\)以上の自然数\(s\)で、\(d(k,x_s) < \epsilon / 2\)なるものがとれる。\(B(x_s, 1/s)\)と\(L\)の共通元のひとつを\(l\)とすると、\(d(k,l)\leq d(k,x_s)+d(x_s, l) < (\epsilon / 2)+(1/s)\leq\epsilon\)から\(l\in B(k,\epsilon)\)を得る。■

いま距離空間で考えているので、点列コンパクト性とコンパクト性は同値である。コンパクト性から導くなら、[#]以降は以下のようになる。

\(K\)のコンパクト性により、\(A_n=\{x_i\mid i\geq n\}\) (\(n=1,2,\ldots\))のすべての触点となっているような\(k\in K\)がとれる。この\(k\)が\(K\)と\({\rm Cl}(L)\)の共通元であること(すなわち\(k\)が\(L\)の触点であること)を示すために、任意の\(\epsilon > 0\)をとり、\(B(k,\epsilon)\)が\(L\)と交わることを導く。\(2/\epsilon\)以上の自然数\(m\)をとる。\(k\)は\(A_m\)の触点でもあるので、\(B(k,\epsilon/2)\)と\(A_m\)の共通元\(x_s\) (\(s\geq m\))がとれる。さらに\(B(x_s,1/s)\)と\(L\)の共通元のひとつを\(l\)とすると、\(d(k,l)\leq d(k,x_s)+d(x_s,l) < (\epsilon/2)+(1/s)\leq(\epsilon/2)+(1/m)\leq\epsilon\)を得る。■

\(k\)が\(L\)の触点であることは、\(d(k,L)=0\)とも書ける。つまり、「\(K\)の点と\(L\)の点のあらゆる組合せの距離の下限がゼロ」という条件から、「\(K\)のほうの点をうまく固定すれば、\(L\)の点を動かすだけで距離の下限がゼロになるようにできる」ということが、\(K\)の点列コンパクト性(あるいはコンパクト性)によって導かれている。

特に\(L\)が閉集合のとき、\(k\in L\)となるので\(K\)と\(L\)は交わる。対偶を取れば、距離空間においてコンパクト集合\(K\)と閉集合\(L\)が交わらないならば\(d(K,L) > 0\)である。