20181118集合と位相ゼミの補足

●命題2.13.4(連続性の言い換え)の証明は、下記のように、もとの定義(1)を、(2)を経由して(3)に書き換える、と考えると見通しがよくなります。ただし、\(X\triangleright x\)は「\(X\)は\(x\)の近傍である」(\(X\in\mathcal{U}(x)\))を意味します。

(1)\(\forall V\triangleright f(a)\exists U\triangleright a[f[U]\subseteq V]\)
⇔(2)\(\forall V\triangleright f(a)\exists U\triangleright a[U\subseteq f^{-1}[V]]\)
⇔(3)\(\forall V\triangleright f(a)[f^{-1}[V]\triangleright a]\)

(1)と(2)の違いは\(\exists U\triangleright a\)よりも後の部分だけであり、(2)と(3)の違いは\(\forall V\triangleright f(a)\)よりも後の部分だけです。これらはいずれも、変化した部分同士だけ切り出して比較しても同値です。

(1)⇔(2)について:
一般に、\(f[U]\subseteq V\)と\(U\subseteq f^{-1}[V]\)は、\(\forall x\in U[f(x)\in V]\)を2通りの流儀で書いたものに過ぎませんから、ただちに同値であることが分かります。テキストには

\(f(U)\subset V\Leftrightarrow U\subset f^{-1}(V)\)であり,(中略)\(f(f^{-1}(V))\subset V\)であることに注意すれば

とありますが、冒頭の両向きの矢印を認めるならば\(f[f^{-1}[V]]\subseteq V\)は使わなくてよいと思います。おそらく「\(U\subseteq f^{-1}[V]\)の両辺に\(f\)を作用させて\(f[f^{-1}[V]]\subseteq V\)を用いると\(f[U]\subseteq V\)が得られる」ということを想定して書いているのだと思いますが、定義から直接言えることを遠回りで示している感があります。むしろ\(f[U]\subseteq V\Leftarrow U\subseteq f^{-1}[V]\)の\(U\)として\(f^{-1}[V]\)を選んで得られるのが\(f[f^{-1}[V]]\subseteq V\)である、と考えたほうが素直でしょう。

(2)⇔(3)について:
集合\(X\)とその要素\(x\)に対して、\(x\in A\subseteq X\)なる\(A\)をとってくることを「\(A\)をカマす」と表現することにします。
「近傍である」=「開集合がカマせる」という定義から、「近傍がカマせること」と「近傍であること」は同値になります。
(証明)(→):同じ開集合をカマせばよい。(←):自分をカマせばよい。■
\(a\)と\(f^{-1}[V]\)との間で上記の同値関係を適用すれば、(2)は直ちに(3)に書き換わります。

●定理2.13.15の(4)には「逆像バージョン」の表現があり、それで書くと「すべての\(B\subseteq Y\)について\[(f^{-1}[B])^a\subseteq f^{-1}[B^a]\]が成り立つ」となります。この左辺の\(B\)を\(B^a\)に変えただけの、「すべての\(B\subseteq Y\)について\[(f^{-1}[B^a])^a\subseteq f^{-1}[B^a]\]が成り立つ」という条件を考えると、これは「閉集合の逆像は閉集合である」という条件にほかならないことに気付きました。これを理解するためには、以下の2点に注意が必要です。
・「閉集合をすべて集めたもの」と「各集合の閉包をすべて集めたもの」は同じ集合族なので、「すべての閉集合\(F\)について\(\psi(F)\)が成り立つ」と「すべての集合\(B\)について\(\psi(B^a)\)が成り立つ」は同値です。
・\(X\)が閉集合であることは\(X=X^a\)と同値ですが、もともと\(X\subseteq X^a\)は必ず成り立っているので、\(X^a\subseteq X\)だけでも同値です。
さて、両者の右辺同士は共通ですから、左辺同士を比較してみましょう。\(B\subseteq B^a\)の逆像をとり、さらに閉包をとっても包含関係は保たれて、共通の\(B\)に対しては後者の左辺が前者のそれを包含します。したがって後者のほうが前者より強い条件のように見えます。しかし前者の\(B\)として\(B^a\)を選びなおすと、\((B^a)^a=B^a\)により後者が得られます。以上により結局、両者は同値になります。