20181230集合と位相ゼミの補足(位相和について)

まず、位相和に無関係に一般的に成り立つ予備知識を切り出して納得しておきます。

・予備知識(1)
写像\(f:X\to Y\)の終域\(Y\)の部分集合\(V\)の逆像\(f^{-1}[V]\)を考えます。逆像一般の理解として、「写像の値域外の要素は、\(V\)に属していてもいなくても、逆像をとった結果に影響しない」ということを注意しておきます。\(f\)の値域\(f[X]\)を用いると、このことは\[f^{-1}[V]=f^{-1}[V\cap f[X]]\]と書き表せます。

・予備知識(2)
位相空間\( (P,\mathcal{O}_P)\)から位相空間\( (Q,\mathcal{O}_Q)\)への写像\(f\)を考えます。いま\(f\)と始域側の位相\(\mathcal{O}_P\)を固定し、「\(f\)を連続写像にするためには終域にどんな位相が入っていればよいか」を考えます。終域の位相\(\mathcal{O}_Q\)が\(f\)を連続にするために満たすべき条件は、その任意の開集合\(O\in\mathcal{O}_Q\)が\(f^{-1}[O]\in\mathcal{O}_P\)を満たすこと、すなわち\[\mathcal{O}_Q\subseteq\{O\subseteq Q\mid f^{-1}[O]\in\mathcal{O}_P\}\]が成り立つことです。この右辺の集合族自体が位相をなすので、これは「\(f\)を連続にするような最強の終域位相」となります。

・本題
テキストの位相和の定義の1行目が不可解という話題が出ましたが、ちょうど、その後に導入された写像\(i_\lambda\)を用いると簡潔に修正できそうです。\(O\cap X_\lambda\in\mathcal{O}_\lambda\)の言わんとすることは、いったん\(X_\lambda\)の各要素にラベル\(\lambda\)を付けて集め直したものを考え、これと\(O\)との共通部分をとった上で、用済みのラベルを再び剥がして\(\mathcal{O}_\lambda\)に属しているかどうかを見る、ということだと思います。これを\(i_\lambda\)で書くと\[\mathcal{O}=\{O\subseteq X\mid\forall\lambda\in\Lambda:i^{-1}_\lambda[O\cap i_\lambda[X_\lambda]]\in\mathcal{O}_\lambda\}\]となります。さて、この\(i^{-1}_\lambda[O\cap i_\lambda[X_\lambda]]\)は、\(i_\lambda[X_\lambda]\)が\(i_\lambda\)の値域であることに注意すると、予備知識(1)により\(i^{-1}_\lambda[O]\)と書き直せます。すなわち\[\mathcal{O}=\{O\subseteq X\mid\forall\lambda\in\Lambda:i^{-1}_\lambda[O]\in\mathcal{O}_\lambda\}\]となりますが、これは予備知識(2)から、各\(i_\lambda\)を連続にする最強の位相であることが直ちに分かります。つまり、1行目の定義を\(i_\lambda\)を用いて書けば、直後で見た定理3.2.7はほとんど「定義より明らか」ということになります。