√xの連続性を、よく知らずに導く

正の実数全体の集合を\(\mathbb{R}^+\)と書く。\(0 < x < y\)のとき\(x^2 < xy < y^2\)である。したがって\(f:\mathbb{R}^+\to\mathbb{R}, x\mapsto x^2\)という狭義単調増加関数を考えることができる。\(f\)は単射ゆえ、終域を\(f\)の値域\(f[\mathbb{R}^+]\)に制限すれば逆関数\(f^{-1}:f[\mathbb{R}^+]\to\mathbb{R}^+\)を考えることができる。実際には\(f\)は連続関数であり、また\(f[\mathbb{R}^+]=\mathbb{R}^+\)であるが、ここではこれらの事実を用いずに\(f^{-1}\)が連続関数であることを導く。

\(f^{-1}\)が\(b=f(a)\in f[\mathbb{R}^+]\)で連続でないと仮定すると、ある共通の\(\epsilon > 0\)(\(\epsilon < a\)としてよい)に対し、\(f[\mathbb{R}^+]\)上の数列\(y_n\)で、\(n=1,2,\ldots\)のすべてに対して\[|y_n-b| < \frac{1}{n}かつ\left|f^{-1}(y_n)-a\right|\geq\epsilon\]となるものが存在する。「かつ」の前件から\(\lim_{n\to\infty}y_n=b\)であるが、いっぽうで後件と\(f\)の狭義単調増加性から、\(y_n\leq f(a-\epsilon)\)または\(f(a+\epsilon)\leq y_n\)が\(n\)ごとに成立し、また\(f(a-\epsilon) < b < f(a+\epsilon)\)であることから、全\(n\)に対し\(|y_n-b|\geq{\rm min}\{b-f(a-\epsilon),f(a+\epsilon)-b\}( > 0)\)となり矛盾する。■

20181230集合と位相ゼミの補足(位相和について)

まず、位相和に無関係に一般的に成り立つ予備知識を切り出して納得しておきます。

・予備知識(1)
写像\(f:X\to Y\)の終域\(Y\)の部分集合\(V\)の逆像\(f^{-1}[V]\)を考えます。逆像一般の理解として、「写像の値域外の要素は、\(V\)に属していてもいなくても、逆像をとった結果に影響しない」ということを注意しておきます。\(f\)の値域\(f[X]\)を用いると、このことは\[f^{-1}[V]=f^{-1}[V\cap f[X]]\]と書き表せます。

・予備知識(2)
位相空間\( (P,\mathcal{O}_P)\)から位相空間\( (Q,\mathcal{O}_Q)\)への写像\(f\)を考えます。いま\(f\)と始域側の位相\(\mathcal{O}_P\)を固定し、「\(f\)を連続写像にするためには終域にどんな位相が入っていればよいか」を考えます。終域の位相\(\mathcal{O}_Q\)が\(f\)を連続にするために満たすべき条件は、その任意の開集合\(O\in\mathcal{O}_Q\)が\(f^{-1}[O]\in\mathcal{O}_P\)を満たすこと、すなわち\[\mathcal{O}_Q\subseteq\{O\subseteq Q\mid f^{-1}[O]\in\mathcal{O}_P\}\]が成り立つことです。この右辺の集合族自体が位相をなすので、これは「\(f\)を連続にするような最強の終域位相」となります。

・本題
テキストの位相和の定義の1行目が不可解という話題が出ましたが、ちょうど、その後に導入された写像\(i_\lambda\)を用いると簡潔に修正できそうです。\(O\cap X_\lambda\in\mathcal{O}_\lambda\)の言わんとすることは、いったん\(X_\lambda\)の各要素にラベル\(\lambda\)を付けて集め直したものを考え、これと\(O\)との共通部分をとった上で、用済みのラベルを再び剥がして\(\mathcal{O}_\lambda\)に属しているかどうかを見る、ということだと思います。これを\(i_\lambda\)で書くと\[\mathcal{O}=\{O\subseteq X\mid\forall\lambda\in\Lambda:i^{-1}_\lambda[O\cap i_\lambda[X_\lambda]]\in\mathcal{O}_\lambda\}\]となります。さて、この\(i^{-1}_\lambda[O\cap i_\lambda[X_\lambda]]\)は、\(i_\lambda[X_\lambda]\)が\(i_\lambda\)の値域であることに注意すると、予備知識(1)により\(i^{-1}_\lambda[O]\)と書き直せます。すなわち\[\mathcal{O}=\{O\subseteq X\mid\forall\lambda\in\Lambda:i^{-1}_\lambda[O]\in\mathcal{O}_\lambda\}\]となりますが、これは予備知識(2)から、各\(i_\lambda\)を連続にする最強の位相であることが直ちに分かります。つまり、1行目の定義を\(i_\lambda\)を用いて書けば、直後で見た定理3.2.7はほとんど「定義より明らか」ということになります。

基と準基

【定義】台集合\(X\)の部分集合族\(\mathcal{C}\)に対し、\[\mathcal{C}の要素の和集合(無限個でもよい)で表されるもの全体\]を\(\check{\mathcal{C}}\)と書く。また\[\mathcal{C}の要素の有限個の共通部分で表されるもの全体\]を\(\hat{\mathcal{C}}\)と書く。ただし、空集合は「\(\mathcal{C}\)のゼロ個の要素の和集合」とみなして\(\varnothing\in\check{\mathcal{C}}\)とし、台集合は「\(\mathcal{C}\)のゼロ個の要素の共通部分」とみなして\(X\in\hat{\mathcal{C}}\)と約束しておく。

これらの記号を用いると、\(X\)の部分集合族\(\mathcal{O}\)が位相(開集合系)をなすことは\[\mathcal{O}=\check{\mathcal{O}}=\hat{\mathcal{O}}\]と書ける。

定義から直ちに、任意の集合族\(\mathcal{A},\mathcal{B},\mathcal{C}\)に対し
(1) \(\mathcal{C}\subseteq\check{\mathcal{C}},\ \mathcal{C}\subseteq\hat{\mathcal{C}}\)
(2) \(\check{\check{\mathcal{C}}}=\check{\mathcal{C}},\ \hat{\hat{\mathcal{C}}}=\hat{\mathcal{C}}\)
(3) \(\mathcal{A}\subseteq\mathcal{B}\)のとき、\(\check{\mathcal{A}}\subseteq\check{\mathcal{B}},\ \hat{\mathcal{A}}\subseteq\hat{\mathcal{B}}\)
が成り立つことが分かる。
以下、\(\mathcal{O}\)は\(X\)上の位相であるとする。上記の位相の特徴づけと性質(1)(3)から、\(X\)の任意の部分集合族\(\mathcal{C}\)に対して
(4) \(\mathcal{C}\subseteq\mathcal{O}\Leftrightarrow\check{\mathcal{C}}\subseteq\mathcal{O}\Leftrightarrow\hat{\mathcal{C}}\subseteq\mathcal{O}\)
が成り立つ。

【定義】\(X\)の部分集合族\(\mathcal{C}\)が\[\mathcal{C}\subseteq\mathcal{O}\subseteq\check{\mathcal{C}}\]を満たすとき、「\(\mathcal{C}\)は\(\mathcal{O}\)の基である」という。

【定義】\(X\)の部分集合族\(\mathcal{C}\)が\[\mathcal{C}\subseteq\mathcal{O}かつ\hat{\mathcal{C}}は\mathcal{O}の基である\]すなわち\[\mathcal{C}\subseteq\mathcal{O}かつ\hat{\mathcal{C}}\subseteq\mathcal{O}\subseteq\check{\hat{\mathcal{C}}}\]を満たすとき、「\(\mathcal{C}\)は\(\mathcal{O}\)の準基である」という。ただし性質(4)により、例えば\[\mathcal{C}\subseteq\mathcal{O}\subseteq\check{\hat{\mathcal{C}}}\]だけでも同値である。

以下では\(\check{\hat{\mathcal{C}}}\)を何度も扱うので、その性質を得ておく。まず(1)(3)を組み合わせることで\[\mathcal{C}\subseteq\check{\mathcal{C}}\subseteq\check{\hat{\mathcal{C}}}\tag{A}\]が言える。また(4)を繰り返し用いることで\[\mathcal{C}\subseteq\mathcal{O}\Leftrightarrow\check{\mathcal{C}}\subseteq\mathcal{O}\Leftrightarrow\check{\hat{\mathcal{C}}}\subseteq\mathcal{O}\tag{B}\]を得る。

【命題】\(\mathcal{C}\)が\(\mathcal{O}\)の基ならば、\(\mathcal{C}\)は\(\mathcal{O}\)の準基でもある。
(証明)性質(A)により、\(\mathcal{C}\subseteq\mathcal{O}\subseteq\check{\mathcal{C}}\)(基であること)は\(\mathcal{C}\subseteq\mathcal{O}\subseteq\check{\hat{\mathcal{C}}}\)(準基であること)を含意する。■

さて性質(B)により、「基であること、準基であること」はそれぞれ\(\mathcal{O}=\check{\mathcal{C}}, \mathcal{O}=\check{\hat{\mathcal{C}}}\)とも書ける。したがって、\(X\)の部分集合族\(\mathcal{C}\)が先に与えられたとき、これを基や準基に持つ位相は(存在するとすれば)一意に定まり、それは各々\(\check{\mathcal{C}},\check{\hat{\mathcal{C}}}\)に等しいはずである。また性質(A)(B)により、これらは(もしも位相をなすならば)\(\mathcal{C}\)を包含する最弱の位相となるはずである。しかし\(\check{\mathcal{C}}\)が位相をなすとは限らないので、\(\mathcal{C}\)を基に持つ位相は必ずしも存在しない。いっぽう、\(\check{\hat{\mathcal{C}}}\)と準基については次が成り立つ。
【命題】\(X\)の任意の部分集合族\(\mathcal{C}\)に対し、\(\check{\hat{\mathcal{C}}}\)は位相をなす。
(証明)\(\check{\hat{\mathcal{C}}}=\check{\check{\hat{\mathcal{C}}}}=\hat{\check{\hat{\mathcal{C}}}}\)を言えばよい。
・\(\check{\hat{\mathcal{C}}}=\check{\check{\hat{\mathcal{C}}}}\)であること:性質(2)の\(\mathcal{C}\)を改めて\(\hat{\mathcal{C}}\)と見ればよい。
・\(\check{\hat{\mathcal{C}}}=\hat{\check{\hat{\mathcal{C}}}}\)であること:\(C_1,C_2\in\check{\hat{\mathcal{C}}}\)を仮定し、\(C_1\cap C_2\in\check{\hat{\mathcal{C}}}\)を導く。\(C_1=\bigcup_\lambda U_\lambda,C_2=\bigcup_\mu U_\mu\)(ただし\(U_\lambda,U_\mu\in\hat{\mathcal{C}}\))と書けるから、\(C_1\cap C_2=\bigcup_{\lambda,\mu}(U_\lambda\cap U_\mu)\)、いま\(U_\lambda\cap U_\mu\in\hat{\hat{\mathcal{C}}}=\hat{\mathcal{C}}\)より、これは\(\check{\hat{\mathcal{C}}}\)に属す。

結局、\(\check{\hat{\mathcal{C}}}\)は「\(\mathcal{C}\)を準基に持つ\(X\)上の位相」とも「\(\mathcal{C}\)を包含する最弱の位相」とも呼ぶことができる。これを「\(\mathcal{C}\)が生成する位相」という。

有界閉集合からの連続全単射は逆写像も連続である

新井仁之『ルベーグ積分講義』p322、問題14.4の解答後半(連続性をいう箇所)を一般的に書き直したら、有名な定理に帰着された。以下において\(X\)を\([0,1]\)、\(Y\)を\([0,l]\)、\(l^{-1}\)を\(\tau\)、\(l^{-1}(s_n)\)を\(t_n\)と読み替えれば、教科書の証明に対応する。ただし背理法を解消するなど、その他の変更も加えている。

【定理】\(X,Y\)は\(\mathbb{R}\)の部分集合で、\(X\)は有界閉集合とする。\(l\)を\(X\)から\(Y\)への連続全単射とする。このとき、\(l^{-1}\)も連続である。

(証明)\(Y\)の点\(s_0\)と、\(s_0\)に収束する\(Y\)の点列\(s_n\)を任意にとり、これを\(l^{-1}\)でうつした\(X\)の点列\(l^{-1}(s_n)\)が\(l^{-1}(s_0)\)にいくらでも近い項を持っていることを示せばよい。
\(l^{-1}(s_n)\)は\(X\)の点列ゆえ有界なので、収束する部分列\(l^{-1}(s_{n*})\)をとることができ、さらに\(X\)が閉集合であることから、その収束先\(t\)は\(X\)に属す。この各項を\(l\)でうつした\(Y\)の点列\(l(l^{-1}(s_{n*}))=s_{n*}\)を考えると、これは\(l\)が連続写像であることから\(l(t)\)に収束する。同時に、この点列は\(s_n\)の部分列でもあるので\(s_0\)に収束する。以上により\(l(t)=s_0\)すなわち\(t=l^{-1}(s_0)\)を得るから、\(l^{-1}(s_n)\)は\(l^{-1}(s_0)\)に収束する部分列を持つ。■

20181125集合と位相ゼミの補足

話題の依存関係は「(2)(3)と(4)は独立しており、ともに(1)に依存する。(5)はどの話とも独立している」です。

・(1)→(2)(3)
・(1)→(4)
・(5)

(1):
包含写像と相対位相の関係を整理しておきます。

準備として、包含写像による逆像が一般的にどう書かれるのか、念のため定義に戻って納得しておくことにします。

まず逆像一般の話として、\(f:P\to Q\)による\(B\subseteq Q\)の逆像\(f^{-1}[B]\)を考えたとき、\(f\)が全射でない限り\(B\)は\(f\)の値域外の要素を有するかもしれません。しかし逆像を考える際には、そんなことはいちいち気にせずに定義に従って\(f(x)\in B\)となる\(x\in P\)をすべて集めればよいだけです。例えば2次関数\(\mathbb{R}\to\mathbb{R},x\mapsto x^2\)による\(\{4\}\)の逆像は\(\{2,-2\}\)ですが、\(\{4,-1\}\)の逆像も同じになります。

包含写像\(i:A\to X\)(ただし\(A\subseteq X\))による\(B\subseteq X\)の逆像\(i^{-1}[B]\)は、まず逆像の定義により\(\{x\in A\mid i(x)\in B\}\)と書かれます。いま\(x\in A\)に対し\(i(x)=x\)だから、この集合は\(\{x\in A\mid x\in B\}\)すなわち\(A\cap B\)と書き直されます。上記同様に、\(B\)は\(i\)の値域(すなわち\(i[A]=A\))外の要素を有するかもしれず、その逆像は\(B\)を\(A\)で切り出したものになることが容易に頷けます。

このように\(i^{-1}[\cdot]\)は\(X\)の部分集合を\(A\)でトリミングする作用を持っていると考えられます。いっぽう\(i[\cdot]\)は\(A\)の部分集合をそのまま\(X\)という舞台に載せる役割を果たします。

(2):
この「トリミング」という発想はまさに、部分空間・相対位相の考え方と同一です。そこで、包含写像を用いて相対位相の定義を書き直すことができます。\(X\)に位相\(\mathcal{O}_X\)が入っているとき、\( (X,\mathcal{O}_X)\)から\(A\)に下ろした相対位相\(\mathcal{O}_A^X\)とは、\(X\)の開集合\(O_X\in\mathcal{O}_X\)を各々\(A\)で切り出した\(A\cap O_X=i^{-1}[O_X]\)をすべて集めたものにほかなりません。したがって相対位相は\[\mathcal{O}_A^X=\{i^{-1}[O_X]:O_X\in\mathcal{O}_X\}\]と書くことができます。

(3):
(2)を用いて定理2.13.8を理解するために、写像の連続性について再考しておきます。

集合\(P,Q\)に対し、\(Q\)に入った位相\(\mathcal{O}_Q\)と写像\(f:P\to Q\)を固定し、\(f\)が連続写像であるためには\(P\)にどんな位相\(\mathcal{O}_P\)が入っていればよいかを考えます。「連続」=「開集合の逆像は開」を用いると、この条件は\[\{f^{-1}[O_Q]:O_Q\in\mathcal{O}_Q\}\subseteq\mathcal{O}_P\]と書けます。この左辺はそれ自体が位相をなすことが容易に確かめられ(確かめてください)、「\( (Q,\mathcal{O}_Q)\)の\(f\)による誘導位相」と呼ばれます。すなわち誘導位相は、与えられた終域位相と写像に対して、「その写像を連続にするために始域に入れるべき最弱の位相」と言うことができます。

これと(2)の「包含写像で定義した相対位相」を見比べると、相対位相\(\mathcal{O}_A^X\)は\( (X,\mathcal{O}_X)\)の包含写像による誘導位相であることが分かります。すなわち\(O_A^X\)は包含写像を連続にするために\(A\)に入れるべき最弱の位相です。

(4):
(1)でまとめた\(i^{-1}[\cdot]\)および\(i[\cdot]\)の作用を\(A\)の部分集合に限定して適用すると、集合そのものは変化させずに「\(A\)上で考えるか、\(X\)上で考えるか」だけを渡ることになります。すると、命題2.12.4の「→」は包含写像の開(閉)写像性にほかならず、また「←」は包含写像の連続性によっていることが分かります。以前にこの命題を扱った際、\(A\)が開(閉)集合でなくても「←」は成り立つことを見ましたが、これは「\(A\)が開(閉)集合でなくても包含写像は連続である」という事実に対応します。

(5):
個々の点における写像の連続性の言い換え(命題2.13.4)を用いると、定理2.13.11(連続写像の合成は連続)の証明が簡明になります。多くの教科書では、むしろ「言い換えたあとのほう」を定義として採用していると思います。

(証明)任意の点\(a\in X\)をとる。\( (g\circ f)(a)=g(f(a))\in Z\)の任意の近傍\(V\)をとると、\(g\)の連続性から\(g^{-1}[V]\)は\(f(a)\in Y\)の近傍である。すると\(f\)の連続性から\(f^{-1}[g^{-1}[V]]=(g\circ f)^{-1}[V]\)は\(a\)の近傍である。したがって\(g\circ f\)は\(a\)において連続である。■

20181118集合と位相ゼミの補足

●命題2.13.4(連続性の言い換え)の証明は、下記のように、もとの定義(1)を、(2)を経由して(3)に書き換える、と考えると見通しがよくなります。ただし、\(X\triangleright x\)は「\(X\)は\(x\)の近傍である」(\(X\in\mathcal{U}(x)\))を意味します。

(1)\(\forall V\triangleright f(a)\exists U\triangleright a[f[U]\subseteq V]\)
⇔(2)\(\forall V\triangleright f(a)\exists U\triangleright a[U\subseteq f^{-1}[V]]\)
⇔(3)\(\forall V\triangleright f(a)[f^{-1}[V]\triangleright a]\)

(1)と(2)の違いは\(\exists U\triangleright a\)よりも後の部分だけであり、(2)と(3)の違いは\(\forall V\triangleright f(a)\)よりも後の部分だけです。これらはいずれも、変化した部分同士だけ切り出して比較しても同値です。

(1)⇔(2)について:
一般に、\(f[U]\subseteq V\)と\(U\subseteq f^{-1}[V]\)は、\(\forall x\in U[f(x)\in V]\)を2通りの流儀で書いたものに過ぎませんから、ただちに同値であることが分かります。テキストには

\(f(U)\subset V\Leftrightarrow U\subset f^{-1}(V)\)であり,(中略)\(f(f^{-1}(V))\subset V\)であることに注意すれば

とありますが、冒頭の両向きの矢印を認めるならば\(f[f^{-1}[V]]\subseteq V\)は使わなくてよいと思います。おそらく「\(U\subseteq f^{-1}[V]\)の両辺に\(f\)を作用させて\(f[f^{-1}[V]]\subseteq V\)を用いると\(f[U]\subseteq V\)が得られる」ということを想定して書いているのだと思いますが、定義から直接言えることを遠回りで示している感があります。むしろ\(f[U]\subseteq V\Leftarrow U\subseteq f^{-1}[V]\)の\(U\)として\(f^{-1}[V]\)を選んで得られるのが\(f[f^{-1}[V]]\subseteq V\)である、と考えたほうが素直でしょう。

(2)⇔(3)について:
集合\(X\)とその要素\(x\)に対して、\(x\in A\subseteq X\)なる\(A\)をとってくることを「\(A\)をカマす」と表現することにします。
「近傍である」=「開集合がカマせる」という定義から、「近傍がカマせること」と「近傍であること」は同値になります。
(証明)(→):同じ開集合をカマせばよい。(←):自分をカマせばよい。■
\(a\)と\(f^{-1}[V]\)との間で上記の同値関係を適用すれば、(2)は直ちに(3)に書き換わります。

●定理2.13.15の(4)には「逆像バージョン」の表現があり、それで書くと「すべての\(B\subseteq Y\)について\[(f^{-1}[B])^a\subseteq f^{-1}[B^a]\]が成り立つ」となります。この左辺の\(B\)を\(B^a\)に変えただけの、「すべての\(B\subseteq Y\)について\[(f^{-1}[B^a])^a\subseteq f^{-1}[B^a]\]が成り立つ」という条件を考えると、これは「閉集合の逆像は閉集合である」という条件にほかならないことに気付きました。これを理解するためには、以下の2点に注意が必要です。
・「閉集合をすべて集めたもの」と「各集合の閉包をすべて集めたもの」は同じ集合族なので、「すべての閉集合\(F\)について\(\psi(F)\)が成り立つ」と「すべての集合\(B\)について\(\psi(B^a)\)が成り立つ」は同値です。
・\(X\)が閉集合であることは\(X=X^a\)と同値ですが、もともと\(X\subseteq X^a\)は必ず成り立っているので、\(X^a\subseteq X\)だけでも同値です。
さて、両者の右辺同士は共通ですから、左辺同士を比較してみましょう。\(B\subseteq B^a\)の逆像をとり、さらに閉包をとっても包含関係は保たれて、共通の\(B\)に対しては後者の左辺が前者のそれを包含します。したがって後者のほうが前者より強い条件のように見えます。しかし前者の\(B\)として\(B^a\)を選びなおすと、\((B^a)^a=B^a\)により後者が得られます。以上により結局、両者は同値になります。

コンパクト集合と閉集合の交叉性と集合間距離

【問題】距離空間における部分集合\(K,L\)が、次の条件を満たしている。
・\(K\)は点列コンパクトである。
・\(d(K,L)=0\)である。
このとき、\(K\)と\({\rm Cl}(L)\)は交わることを示せ。

(証明)\(d(K,L)=0\)から、任意の\(\epsilon > 0\)に対し、開球\(B(x,\epsilon)\)が\(L\)と交わるような\(x\in K\)が\(\epsilon\)ごとに存在する。そこで、\(B(x_n,1/n)\)がすべて\(L\)と交わるような\(K\)の点列\(x_n\)(\(n=1,2,\ldots\))を作る。[#]\(K\)の点列コンパクト性のもとで\(x_n\)の収束部分列をひとつとり、その収束先を\(k\in K\)とする。この\(k\)が\(K\)と\({\rm Cl}(L)\)の共通元であること(すなわち\(k\)が\(L\)の触点であること)を示すために、任意の\(\epsilon > 0\)をとり、\(B(k,\epsilon)\)が\(L\)と交わることを導く。\(2/\epsilon\)以上の自然数\(s\)で、\(d(k,x_s) < \epsilon / 2\)なるものがとれる。\(B(x_s, 1/s)\)と\(L\)の共通元のひとつを\(l\)とすると、\(d(k,l)\leq d(k,x_s)+d(x_s, l) < (\epsilon / 2)+(1/s)\leq\epsilon\)から\(l\in B(k,\epsilon)\)を得る。■

いま距離空間で考えているので、点列コンパクト性とコンパクト性は同値である。コンパクト性から導くなら、[#]以降は以下のようになる。

\(K\)のコンパクト性により、\(A_n=\{x_i\mid i\geq n\}\) (\(n=1,2,\ldots\))のすべての触点となっているような\(k\in K\)がとれる。この\(k\)が\(K\)と\({\rm Cl}(L)\)の共通元であること(すなわち\(k\)が\(L\)の触点であること)を示すために、任意の\(\epsilon > 0\)をとり、\(B(k,\epsilon)\)が\(L\)と交わることを導く。\(2/\epsilon\)以上の自然数\(m\)をとる。\(k\)は\(A_m\)の触点でもあるので、\(B(k,\epsilon/2)\)と\(A_m\)の共通元\(x_s\) (\(s\geq m\))がとれる。さらに\(B(x_s,1/s)\)と\(L\)の共通元のひとつを\(l\)とすると、\(d(k,l)\leq d(k,x_s)+d(x_s,l) < (\epsilon/2)+(1/s)\leq(\epsilon/2)+(1/m)\leq\epsilon\)を得る。■

\(k\)が\(L\)の触点であることは、\(d(k,L)=0\)とも書ける。つまり、「\(K\)の点と\(L\)の点のあらゆる組合せの距離の下限がゼロ」という条件から、「\(K\)のほうの点をうまく固定すれば、\(L\)の点を動かすだけで距離の下限がゼロになるようにできる」ということが、\(K\)の点列コンパクト性(あるいはコンパクト性)によって導かれている。

特に\(L\)が閉集合のとき、\(k\in L\)となるので\(K\)と\(L\)は交わる。対偶を取れば、距離空間においてコンパクト集合\(K\)と閉集合\(L\)が交わらないならば\(d(K,L) > 0\)である。