逆説的集合

砂田利一『バナッハ・タルスキーのパラドックス』付録の補題6の証明が理解できなかったので書き直してみた。

補題】群$G$の作用する空間$X$において、$X$の部分集合$E$が、どのふたつも互いに素な$E$の部分集合$A_1,\ldots,A_m, B_1,\ldots,B_n$によって$E=\bigcup_{i=1}^m g_iA_i=\bigcup_{j=1}^n h_jB_j$(ただし$g_1,\ldots,g_m,h_1\ldots,h_n\in G$)と書かれるとき、互いに素な$E$の部分集合$A,B$で$A\approx E\approx B$を満たすものが存在する。

【証明】$\bigoplus_{i=1}^m A_i$と$\bigoplus_{j=1}^n B_j$は互いに素な$E$の部分集合であるが、これらがともに$E$と分割合同であることを示す。

$m=3$の場合について示すが、一般の$m$についても同様である。

\[E=g_1A_1\cup g_2A_2\cup g_3A_3=g_1A_1+(g_2A_2\backslash g_1A_1)+(g_3A_3\backslash g_2A_2\backslash g_1A_1)\]である。すると\[\underbrace{g_1^{-1}(g_1A_1)}_{=A_1}\cup\underbrace{g_2^{-1}(g_2A_2\backslash g_1A_1)}_{\subseteq A_2}\cup\underbrace{g_3^{-1}(g_3A_3\backslash g_2A_2\backslash g_1A_1)}_{\subseteq A_3}\subseteq A_1+A_2+A_3\]であり、左辺は直和となるので、$E$はこれと分割合同である。したがって$E\preceq A_1+A_2+A_3$である。いっぽう$A_1+A_2+A_3\subseteq E$から$A_1+A_2+A_3\preceq E$ゆえ、補題4(バナッハ・シュレーダー・ベルンシュタインの定理)により$E\approx A_1+A_2+A_3$である。$\bigoplus_{j=1}^n B_j$についても同様である。