再帰定理・改

再帰定理 - y_bonten's blogを簡明に改良した。

『数学のロジックと集合論』p77、定理2.10の証明を、自分で書き直してみた。

\(m\in\mathbb{N}\)と写像\(g:\mathbb{N}\to\mathbb{N}\)が与えられている。\(k\in\mathbb{N}\)ごとに条件\(\psi_k(h)\)を「\(h\)が以下のすべてを満たすこと」と定義する。
・\(h:\mathbb{N}\to\mathbb{N}\)は\(\{0,1,\ldots,k\}\)を定義域とする部分写像である
・\(h(0)=m\)
・\(x'\in{\rm dom}(h)\)ならば\(h(x')=g(h(x))\)

補題】各々の\(k\in\mathbb{N}\)に対し、\(\psi_k\)を満たすものが一意に存在する。

(証明)\(k\)についての帰納法による。まず\(\{\langle 0,m\rangle\}\)は\(\psi_0\)を満たしている。一意性を示すために\(\psi_0(h)\)を仮定すると、\(h(0)=m\)すなわち\(\langle 0,m\rangle\in h\)であり、\(h\)は定義域を\(\{0\}\)とする部分写像であるから、これ以外の要素を持たず、\(h=\{\langle 0,m\rangle\}\)となる。
次に\(k\in\mathbb{N}\)に対し、\(h^*_k\)が\(\psi_k\)を満たす唯一のものであると仮定し、\(\psi_{k'}\)を満たすものが一意に存在することを示す。\(h^*_k\)に\(\langle k',g(h^*_k(k))\rangle\)を付け加えたものを\(h_{k'}\)とすれば、これは\(\psi_{k'}\)を満たしている。一意性を示すために\(\psi_{k'}(h)\)を仮定し、\(h=h_{k'}\)を導く。\(h\upharpoonright_{\leq k}\)は\(\psi_k\)を満たしているから\(h^*_k\)に一致し、したがって\(h\upharpoonright_{\leq k}=h_{k'}\upharpoonright_{\leq k}\)である。特に\(h(k)=h_{k'}(k)\)が成り立つので、両辺に\(g\)を作用させると\(h(k')=h_{k'}(k')\)も得られる。■

各\(k\in\mathbb{N}\)に対し\(\psi_k\)を満たす唯一のものを\(h^*_k\)とおく。

【定理】\(f=\{\langle k,h^*_k(k)\rangle:k\in\mathbb{N}\}\)は、以下をともに満たすような唯一の全域写像\(:\mathbb{N}\to\mathbb{N}\)である。
・\(f(0)=m\)
・任意の\(n\in\mathbb{N}\)に対し、\(f(n')=g(f(n))\)

(証明)\(f\)は\(\mathbb{N}\)から\(\mathbb{N}\)への全域写像であり、\(f(n)=h^*_n(n)\)であるから、\(f(0)=h^*_0(0)=m\)である。任意の\(n\in\mathbb{N}\)をとると、\(h^*_{n'}\upharpoonright_{\leq n}\)は\(\psi_n\)を満たすゆえ\(h^*_n\)に一致するから\(h^*_{n'}(n)=h^*_{n'}\upharpoonright_{\leq n}(n)=h^*_{n}(n)\)、この最左辺と最右辺に\(g\)を作用させれば\(h^*_{n'}(n')=g(h^*_n(n))\)すなわち\(f(n')=g(f(n))\)となる。一意性を示すため、全域写像\(F:\mathbb{N}\to\mathbb{N}\)が同じ条件を満たすと仮定し、\(F=f\)を帰納法により示す。まず\(F(0)=m=f(0)\)である。\(F(k)=f(k)\)と仮定すると、両辺に\(g\)を作用させることにより\(F(k')=f(k')\)を得る。■

モストフスキ同型定理

補題1】推移的集合\(T\)において関係\(\in\)が推移律を満たすとき、\(T\)の要素はすべて推移的集合である。
(証明)\(x\in y\in z\in T\)と仮定し、\(x\in z\)を導く。\(T\)が推移的集合であることから\(y\in T\)、さらに\(x\in T\)である。すると\(T\)における二項関係\(\in\)の推移性から\(x\in z\)となる。■

【定義】整列集合\( (W, < )\)の任意の要素\(x\)の各々について、条件\(\psi_x(\pi)\)とは\(\pi\)が以下をともに満たすことであるとする。
・\(\pi\)は\( (W_{ < x}, < )\)から\( (\pi[W_{ < x}],\in)\)への同型写像である。
・\(\pi\)の値域\(\pi[W_{ < x}]\)は推移的集合である。

補題2】\(\pi\)が整列集合\( (W, < )\)から推移的集合\( (T, \in)\)への同型写像であり、\(x\in W\)のとき、\(\pi\upharpoonright_{ < x}\)は\(\psi_x\)を満たし、その値域は\(\pi(x)\)である。
(証明)整列集合の性質から、\(\pi\upharpoonright_{ < x}\)は\( (W_{ < x}, < )\)から\( (T_{\in\pi(x)},\in)\)への同型写像である。\(T\)が推移的集合であることから\(\pi(x)\subseteq T\)、したがって\(T_{\in\pi(x)}=T\cap\pi(x)=\pi(x)\)である。\( (T,\in)\)は整列集合と同型であるからそれ自身も整列集合であり、したがって関係\(\in\)は\(T\)において推移的である。よって補題1により\(\pi(x)\)は推移的集合である。■

補題3】整列集合\( (W, < )\)の任意の\(x\in W\)に対し、\(\psi_x\)を満たすものが一意に存在する。

(証明)整列集合上の超限帰納法による。任意の\(x\in W\)をとり、\(y < x\)なる任意の\(y\in W\)の各々について、\(\psi_y\)を満たすものが一意に存在すると仮定し、それらを\(\pi^*_y\)とする。\(W_{ < x}\)の各要素\(y\)に対して\(\pi^*_y\)の値域を対応させる写像クラス\(\pi_x=\{\langle y,\pi^*_y[W_{ < y}]\rangle: y < x\}\)を考えれば、置換公理のもとで\(\pi_x[W_{ < x}]\)および\(\pi_x\)は集合をなす。この\(\pi_x\)が\(\psi_x\)を満たすことを示す。以下では、「帰納法の仮定により、各\(\pi_x(y)\)は\(\psi_y\)を満たす写像の値域として唯一のものである」という事実を頻繁に用いる。
・\(\pi_x\)が単射であること:\(u,v\in W_{ < x}\)かつ\(\pi_x(u)=\pi_x(v)\)と仮定すると、\(W_{ < u}\)と\(W_{ < v}\)が同型となるから、整列集合の性質により\(u=v\)である。
・任意の\(u,v\in W_{ < x}\)について、\(u < v\Leftrightarrow\pi_x(u)\in\pi_x(v)\)であること:(→)\(u < v < x\)と仮定する。補題2により、\(\pi^*_v\upharpoonright_{ < u}\)は\(\psi_u\)を満たし、その値域は\(\pi^*_v(u)\)である。よって\(\pi_x(u)=\pi^*_v(u)\in\pi_x(v)\)である。(←)\(u,v\in W_{ < x}\)かつ\(\pi_x(u)\in\pi_x(v)\)と仮定すると、\(\pi_x(u)=\pi^*_v(w)\)なる\(w < v\)が存在する。補題2により\(\pi^*_v\upharpoonright_{ < w}\)は\(\psi_w\)を満たし、その値域は\(\pi^*_v(w)\)である。よって\(\pi_x(u)=\pi^*_v(w)=\pi_x(w)\)となり、\(\pi_x\)の単射性から\(u=w < v\)を得る。
・\(\pi_x[W_{ < x}]\)が推移的集合であること:上記の「←」の証明において\(\pi_x(u)\)を\(s\)と読み替えて同様の議論をすることにより、\(s=\pi_x(w)\in\pi[W_{ < x}]\)を得る。
最後に一意性を示すため、\(\psi_x(\pi'_x)\)を仮定して\(\pi'_x=\pi_x\)を導く。任意の\(y < x\)をとると、補題2により\(\pi'_x\upharpoonright_{ < y}\)は\(\psi_y\)を満たし、その値域は\(\pi'_x(y)\)である。したがって\(\pi'_x(y)=\pi_x(y)\)である。■

【定理】任意の整列集合\( (W, <)\)の各々について、これと同型な推移的集合が一意に存在する。
(証明)\(W\)の末尾に要素\(z\)を付け加えた整列集合\(W^+\)を考えると、\(W=W^+_{ < z}\)であるから、補題3により\(W\)と同型な推移的集合が一意に存在する。■

国際言語学オリンピックの問題

のらんぶるさん紹介の国際言語学オリンピックの問題の別解をメモしておく。自分で解きたい人は読まないでください。
上質の言語パズル!言語学の知識不要,「国際言語学オリンピック」が面白い - のらんぶろぐ X
(以下、ネタバレ注意)






















「taluは『2倍』の意味だろうか」まではのらんぶるさんと同じ推論をした。

taluは「2倍」、yepokoは「2倍して1を足す」だろう。
するとrureponga=5、malapunga=7、alapunga=13、polangipunga=15で
10=5×2、15=7×2+1、27=13×2+1、30=15×2、35=24+5×2+1、48=24×2、50=24+13×2、79=24×2+15×2+1と説明がつく。
残った式は

(ア)20=supu
(イ)21=tokapunga telu
(ウ)40=tokapu(24) malapu
(エ)97=tokapu(24) yepoko alapunga(13) telu

の4つだ(すでに見た通り69=48+21なので、69には新しい情報は無い)。
(ウ)から40=24+malapu、つまりmalapu=16と考えて、malapunga=7と比較し、-punga系統が奇数ばかりだったことも考え合わせると、
[-pu]=([-punga]+1)×2という関係があるのではないか。
あるいは、基準となるnがあって、[-pu]=2n, [-punga]=n-1と考えてもいい。
するとtokapunga=tokapu(24)÷2-1=11だ。(イ)と21=11×2-1から、teluは「2倍して1を引く」のではないか……「telu<yepoko」って、そういう意味か!
すると(エ)97=24 yepoko+13×2-1から、24 yepoko=72。あれ?ここだけyepokoは「3倍」って意味に変わっている。
もしかしてtokapuの後に来るときは24×2+1ではなく24×(2+1)と解釈するのか?そう信じることにしよう。
(ア)は孤立していて使えなさそうに見えたが、もしかしたらsupungaという語があって、その値はsupu(20)÷2-1=9かもしれない。

以上の仮定を用いて設問に解答したところ、全問とも合致を見た。

関数の超限再帰的定義

任意の集合\(x\)の各々に対し、ただひとつの集合\(G(x)\)を返す規則\(G\)が与えられている*1。順序数\(\alpha\)ごとに、条件\(\psi_\alpha(f)\)を「\(f\)は\(\alpha\)を定義域とする関数であり、任意の\(\beta\in{\rm dom}f\)について\(f(\beta)=G(f\upharpoonright_\beta)\)が成り立つ」と定義する。

補題】\(\psi_\alpha\)を満たすものは\(\alpha\)ごとに一意に存在する。

(証明)超限帰納法による。\(\beta < \alpha\)なる任意の\(\beta\)の各々に対し、\(f^*_\beta\)は\(\psi_\beta\)を満たす唯一のものであると仮定する。\(f=\{\langle\beta,G(f^*_\beta)\rangle:\beta < \alpha\}\)とおけば、\(f\)は\(\alpha\)を定義域とする関数クラスとなっているから、置換公理のもとで集合をなす。これが\(\psi_\alpha\)を満たすことを示す。任意の\(\beta < \alpha\)をとり、さらに任意の\(\gamma < \beta\)をとる。\(f^*_\beta\upharpoonright_\gamma\)は\(\psi_\gamma\)を満たすから\(f^*_\gamma\)に一致する。\(f^*_\beta\upharpoonright_\gamma=f^*_\gamma\)の両辺に\(G\)を作用させれば\(f^*_\beta(\gamma)=f(\gamma)\)、これが任意の\(\gamma < \beta\)で成り立つことから\(f^*_\beta=f\upharpoonright_\beta\)である。再び両辺に\(G\)を作用させると\(f(\beta)=G(f\upharpoonright_\beta)\)を得る。
次に一意性を示すため、\(\psi_\alpha(f')\)を仮定して\(f'=f\)を導く。任意の\(\beta < \alpha\)をとれば、\(f'\upharpoonright_\beta\)は\(\psi_\beta\)を満たすから\(f^*_\beta\)に一致する。\(f'\upharpoonright_\beta=f^*_\beta\)の両辺に\(G\)を作用させれば\(f'(\beta)=f(\beta)\)を得る。■

任意の順序数の各々\(\alpha\)に対し、\(\psi_\alpha\)を満たす唯一のものを改めて\(f^*_\alpha\)と書くことにする。

【定理】順序数\(\alpha\)に対し\(G(f^*_\alpha)\)を与える規則を\(F\)とすれば、\(F(\alpha)=G(F\upharpoonright_\alpha)\)が成り立つ。ここで\(F\upharpoonright_\alpha\)とは\(\{\langle\gamma,F(\gamma)\rangle:\gamma < \alpha\}\)を意味し、これは置換公理により集合をなしている。
(証明)任意の順序数\(\alpha\)をとると、補題の証明と同様にして\(f^*_\alpha=F\upharpoonright_\alpha\)を得るから、この両辺に\(G\)を作用させれば\(F(\alpha)=G(F\upharpoonright_\alpha)\)となる。■

*1:規則\(G\)の実体は、\(\forall x\exists!y[G(x,y)]\)を満たす述語\(G(x,y)\)である。

関数の超※★帰的定義・改

※このエントリの内容は古くなっています。より簡明な証明が
関数の超限再帰的定義・改の改 - y_bonten's blog
にあります。

前エントリの\(\psi_\alpha(f)\)における\(f\)の定義域を「\(\alpha\)未満」から「\(\alpha\)以下」に変更し、証明を簡素化したものを示す。

任意の集合\(x\)の各々に対し、ただひとつの集合\(G(x)\)を与える規則\(G\)が与えられている*1。順序数\(\alpha\)ごとに、条件\(\psi_\alpha(f)\)を「\(f\)は『\(\alpha\)以下の順序数全体』を定義域とする関数であり、任意の\(\beta\in{\rm dom}f\)について\(f(\beta)=G(f\upharpoonright_{ < \beta})\)が成り立つ」と定義する。

補題】\(\mu,\nu\)は\(\nu\leq\mu\)を満たす順序数であり、\(f_\mu,f_\nu\)はそれぞれ\(\psi_\mu,\psi_\nu\)を満たしている。\(\psi_\nu\)を満たすものが\(f_\nu\)のほかに存在しないとき、\(f_\mu(\nu)=f_\nu(\nu)\)である。
(証明)\(f_\mu\upharpoonright_{\leq\nu}\)は\(\psi_\nu\)を満たしているので\(f_\nu\)に一致する。すると\(f_\mu(\nu)=f_\mu\upharpoonright_{\leq\nu}(\nu)=f_{\nu}(\nu)\)となる。■

【定理】\(\psi_\alpha\)を満たすものは\(\alpha\)ごとに一意に存在する。

(証明)超限帰納法による。\(\gamma < \alpha\)なる任意の\(\gamma\)の各々に対し、\(f_\gamma\)は\(\psi_\gamma\)を満たす唯一のものであると仮定する。\(\displaystyle h=\bigcup_{\gamma < \alpha}f_\gamma\)とおけば、これは置換公理と和集合公理により集合をなす。さらに\(f=h\cup\{\langle\alpha,G(h)\rangle\}\)を作り、これが\(\psi_\alpha\)を満たすことを示す。補題により、\(f\)は「\(\alpha\)以下の順序数全体」を定義域とする関数になっており、\(\beta < \alpha\)における\(f(\beta)\)の値は\(f_\beta(\beta)\)となることが分かる。これは\(f_\beta\)が\(\psi_\beta\)を満たすことから\(G(f_\beta\upharpoonright_{ < \beta})\)に等しく、さらに\(f_\beta=f\upharpoonright_{\leq\beta}\)となっていることから\(G(f\upharpoonright_{ < \beta})\)と書き直せる。また\(\beta=\alpha\)のときの\(f(\beta)\)の値は\(G(h)\)であるが、これも\(h=f\upharpoonright_{ < \alpha}\)により\(G(f\upharpoonright_{ < \alpha})\)と書き直せる。以上により、\(f\)は\(\psi_\alpha\)を満たす。
次に一意性を示すため、\(\psi_\alpha(f')\)を仮定して\(f'=f\)を導く。任意の\(\gamma < \alpha\)をとれば、\(f'\upharpoonright_{\leq\gamma}\)と\(f\upharpoonright_{\leq\gamma}\)はともに\(\psi_\gamma\)を満たすから、帰納法の仮定により両者は一致し、特に\(f'(\gamma)=f(\gamma)\)となる。これが任意の\(\gamma < \alpha\)について成り立つことから\(f'\upharpoonright_{ < \alpha}=f\upharpoonright_{ < \alpha}\)である。両辺に\(G\)を施せば\(f'(\alpha)=f(\alpha)\)も言えるから、\(f'=f\)である。■

任意の順序数の各々\(\alpha\)に対し、\(\psi_\alpha\)を満たす唯一のものを改めて\(f^*_\alpha\)と書くことにする。

【定理】順序数\(\alpha\)に対し\(f^*_\alpha(\alpha)\)を与える規則を\(F\)とすれば、\(F(\alpha)=G(F\upharpoonright_{ < \alpha})\)が成り立つ。ここで\(F\upharpoonright_{ < \alpha}\)とは\(\{\langle\gamma,F(\gamma)\rangle:\gamma < \alpha\}\)を意味し、これは置換公理により集合をなしている。
(証明)任意の順序数\(\alpha\)をとる。補題により、任意の\(\gamma < \alpha\)について\(f^*_\alpha(\gamma)=f^*_\gamma(\gamma)=F(\gamma)\)となる、つまり\(f^*_\alpha\upharpoonright_{ < \alpha}=F\upharpoonright_{ < \alpha}\)である。したがって\(F(\alpha)=f^*_\alpha(\alpha)=G(f^*_\alpha\upharpoonright_{ < \alpha})=G(F\upharpoonright_{ < \alpha})\)となる。■

*1:規則\(G\)の実体は、\(\forall x\exists!y[G(x,y)]\)を満たす述語\(G(x,y)\)である。

関数の超※★帰的定義

※このエントリの内容は古くなっています。より簡明な証明が
http://y-bonten.hatenablog.com/entry/2016/05/19/060644
にあります。

任意の集合\(x\)の各々に対し、ただひとつの集合\(G(x)\)を与える規則\(G\)が与えられている。規則\(G\)の実体は、\(\forall x\exists!y[G(x,y)]\)を満たす述語\(G(x,y)\)である。順序数\(\alpha\)ごとに、条件\(\psi_\alpha(f)\)を「\(f\)は\(\alpha\)を定義域とする関数であり、任意の\(\beta < \alpha\)(つまり\(\beta\in{\rm dom}f\))について\(f(\beta)=G(f\upharpoonright_\beta)\)が成り立つ」と定義する。つまり、関数\(f\)にとって\(G\)は「\(\beta\)未満の『履歴』から\(\beta\)における値を算出する規則」である。

【定理】\(\psi_\alpha\)を満たすものは\(\alpha\)ごとに一意に存在する。

これを証明するために、まず以下の補題を用いて一意性を示す。

補題A】\(\mu\)を順序数とし、\(f_\mu\)が\(\psi_\mu\)を満たしている。このとき、任意の\(\nu < \mu\)について\(f_\mu\upharpoonright_\nu\)は\(\psi_\nu\)を満たす。
(証明)\(f_\mu\upharpoonright_\nu\)は\(\nu\)を定義域とする関数である。任意の\(\beta < \nu\)をとると、\(f_\mu\upharpoonright_\nu(\beta)=f_\mu(\beta)\)、いっぽう\(G((f_\mu\upharpoonright_\nu)\upharpoonright_\beta)=G(f_\mu\upharpoonright_\beta)\)であり、両者は\(\psi_\mu(f_\mu)\)により等しい。■

【\(f_\alpha\)の一意性】\(\alpha\)を任意の順序数とする。\(\psi_\alpha\)を満たすものは、存在すれば一意である。
(証明)超限帰納法による。\(\gamma < \alpha\)なる任意の\(\gamma\)の各々に対し、\(\psi_\gamma\)を満たすものは高々ひとつしかないと仮定し、さらに\(\psi_\alpha(f_1),\psi_\alpha(f_2)\)を仮定して\(f_1=f_2\)を導く。任意の\(\beta < \alpha\)をとれば、補題Aにより\(f_1\upharpoonright_\beta\)と\(f_2\upharpoonright_\beta\)はともに\(\psi_\beta\)を満たすから、帰納法の仮定により両者は一致する。したがって\(f_1(\beta)=G(f_1\upharpoonright_\beta)=G(f_2\upharpoonright_\beta)=f_2(\beta)\)、これが任意の\(\beta < \alpha\)について成り立つことから\(f_1=f_2\)である。■

この一意性と補題Aから、下の補題Bを導いておき、存在性の証明に備える。

補題B】\(\mu,\nu\)は\(\nu < \mu\)を満たす順序数であり、\(f_\mu,f_\nu\)はそれぞれ\(\psi_\mu,\psi_\nu\)を満たしている。このとき\(f_\mu
\upharpoonright_\nu=f_\nu\)、したがって\(f_\mu(\nu)=G(f_\nu)\)である。
(証明)補題Aにより\(f_\mu\upharpoonright_\nu\)は\(\psi_\nu\)を満たしているので、上で示した一意性から\(f_\nu\)に一致する。\(\psi_\mu(f_\mu)\)から\(f_\mu(\nu)=G(f_\mu
\upharpoonright_\nu)=G(f_\nu)\)。■

【\(f_\alpha\)の存在性】任意の順序数\(\alpha\)の各々に対し、\(\psi_\alpha\)を満たすものが存在する。
(証明)超限帰納法による。(ア)\(\psi_0(\varnothing)\)が成り立つ。(イ)後続順序数\(\alpha\)に対し、\(\alpha\)のひとつ前の順序数を\(\alpha^-\)とおいて\(\psi_{\alpha^-}(f_{\alpha^-})\)を仮定する。\(f=f_{\alpha^-}\cup\{\langle\alpha^-,G(f_{\alpha^-})\rangle\}\)とおくと、\(f\)は\(\alpha\)を定義域とする関数であり、\(f_{\alpha^-}=f\upharpoonright_{\alpha^-}\)となっているから、\(\psi_\alpha(f)\)が成り立っている。(ウ)極限順序数\(\alpha\)に対し、\(\gamma < \alpha\)なる任意の順序数\(\gamma\)の各々について\(f_\gamma\)が\(\psi_\gamma\)を満たすと仮定する。\(f=\displaystyle\bigcup_{\gamma < \alpha}f_\gamma\)は置換公理と和集合公理により集合をなすが、これが\(\psi_\alpha\)を満たすことを示す。任意の\(\beta < \alpha\)をとると、\(\gamma\leq\beta\)なる\(f_\gamma\)は\(\beta\)を定義域に持たず、\(\beta < \gamma\)なる\(f_\gamma\)については補題Bにより\(f_\gamma(\beta)=G(f_\beta)\)となり、\(\gamma\)の値によらない。したがって\(\langle\beta,y\rangle\in f\)を満たす\(y\)は\(G(f_\beta)\)に限られる。いっぽう\(\alpha\)に属さないものはどの\(f_\gamma\)の定義域にも属さない。以上により、\(f\)は\(\alpha\)を定義域とする関数である。すると\(f_\beta\subset f\)は\(f\)の制限となり、\(f(\beta)=G(f_\beta)=G(f\upharpoonright_\beta)\)が成り立つから、\(f\)は\(\psi_\alpha\)を満たしている。■

一意性・存在性がともに示されたので、任意の順序数の各々\(\alpha\)に対し、\(\psi_\alpha\)を満たす唯一のものを改めて\(f^*_\alpha\)と書くことにする。

【定理】順序数\(\alpha\)に対し\(G(f^*_\alpha)\)を与える規則を\(F\)とすれば、\(F(\alpha)=G(F\upharpoonright_\alpha)\)が成り立つ。ここで\(F\upharpoonright_\alpha\)とは\(\{\langle\gamma,F(\gamma)\rangle:\gamma < \alpha\}\)を意味し、これは置換公理により集合をなしている。
(証明)任意の順序数\(\alpha\)をとる。補題Bにより、任意の\(\gamma < \alpha\)について\(f^*_\alpha(\gamma)=G(f^*_\gamma)\)となるから、\(f^*_\alpha=F\upharpoonright_\alpha\)である。この両辺に\(G\)を作用させると\(F(\alpha)=G(F\upharpoonright_\alpha)\)を得る。■

モストフスキ同型写像の一意性

ゲーデルと20世紀の論理学』第4巻第2章(Web版
http://fuchino.ddo.jp/misc/goedel_et_logique_du_20e_siecle_4_I_2.pdf)定理2.17の前半、モストフスキ同型写像の一意性の証明を自分で書いてみた。教科書で行なわれている「後続点・極限点」といった場合分けは不要ではないかと考えている。

【定義】二項関係\(R\)を備えた集合\(X\)とその要素\(x\)に対し、\(\{y\in X\mid yRx\}\)を\(X_{Rx}\)と書く。

補題】\(R\)を\(X\)上の二項関係とする。\(\pi\)が\(\langle X, R\rangle\)から推移的集合\(\langle T,\in\rangle\)への同型写像であるとき、\(\pi[X_{Rx}]=\pi(x)\)が成り立つ。
(証明)\(\pi\)が同型写像であることから\(\pi[X_{Rx}]=T_{\in\pi(x)}\)である。いっぽう\(T\)は推移的集合であるから、任意の\(t\in T\)に対し\(T_{\in t}=t\)である。以上により\(\pi[X_{Rx}]=\pi(x)\)である。■

【定理】\(\langle X, <\rangle\)を整列集合とする。関係\(\in\)について\(X\)と同型な推移的集合は(存在すれば)一意である。
(証明)\(X\)から推移的集合\(T_1,T_2\)への同型写像\(\pi_1,\pi_2\)が存在すると仮定し、任意の\(x\in X\)に対し\(\pi_1(x)=\pi_2(x)\)であることを、\(X\)上の超限帰納法により示す。\(x\in X\)および「\(y < x\)なる任意の\(y\in X\)について\(\pi_1(y)=\pi_2(y)\)」を仮定すると、\(\pi_1[X_{ < x}]=\pi_2[X_{ < x}]\)である。すると補題により\(\pi_1(x)=\pi_2(x)\)である。■