中間値の定理の証明

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高木『解析概論』の中間値の定理の証明が理解しづらかったため、書き直した。

【定理】(中間値の定理)区間\([a,b]\)において連続な関数\(F(x)\)について、\(F(a) < 0, F(b) > 0\)が成り立つとき、\(F(c)=0\)かつ\(a < c < b\)となる\(c\)が存在する。

(証明)\(X=\{\xi\in{\bf R}\ |\ \forall x[a\leq x\leq\xi\rightarrow F(x) < 0]\}\)という集合を考える。この集合について、いくつかの事実を先に見ておく。
まず、\(p\in{\bf R}\)が\(X\)の要素となるかどうかを場合分けして調べる。
(1)\(p < a\)のとき:\(a\leq x\leq p\)を満たす\(x\)は存在しないから、\(p\in X\)である。
(2)\(p=a\)のとき:\(F(a) < 0\)により、\(p\in X\)である。
(3)\(p > a\)のとき:\(F(p)\)の符号によって以下のようになる。
・(3a)\(F(p) < 0\)のとき:さらに場合分けする。
・・(3aア)\(a\leq x < p\)において常に\(F(x) < 0\)であるとき:\(p\in X\)である。
・・(3aイ)\(a\leq x < p\)において\(F(x)\geq 0\)となる\(x\)が存在するとき:\(p\notin X\)である。
・(3b)\(F(p)\geq 0\)のとき:\(p\notin X\)である。

次に、\(X\)の上界全体の集合を\(X^*\)と書けば\(X={\bf R}-X^*\)、つまり任意の\(p\in{\bf R}\)に対し\(p\in X\Leftrightarrow p\notin X^*\)であるという補題を示す。\(p\in X\)と仮定すると、\(F(p)<0\)と\(F(x)\)の連続性から、\(p\)のじゅうぶん小さな近傍で\(F(x) < 0\)となる。すると\(p < q\)かつ\(q\in X\)となる\(q\)が存在する、すなわち\(p\)は\(X\)の上界ではない。逆に\(p\notin X^*\)と仮定して、\(p < q\)かつ\(q\in X\)を満たす\(q\)を取れば、\(a\leq x\leq p\)を満たす任意の\(x\)は同時に\(a\leq x\leq q\)を満たすので\(F(x) < 0\)も満たし、\(p \in X\)である。

以上の準備のもと、中間値の定理を証明する。上記(1)あるいは(2)から\(X\)は空でなく、また\(a < b\)と\(F(b) > 0\)から、\(b\)は(3b)に該当し、上に示した補題から\(X\)の上界となる。したがって\(\bf R\)の完備性により\(X\)は最小上界\(c(\leq b)\)を持つ。

補題から\(c\notin X\)、したがって\(c\)は(3aイ)または(3b)のいずれかに該当するが、前者は「\(a\leq x < c\)において\(F(x) \geq 0\)となる\(x\)」が\(c\)よりも小さな\(X\)の上界となるのでふさわしくない。したがって\(a < c\)かつ\(F(c)\geq 0\)である。

\(F(c) > 0\)と仮定すると矛盾することを示す。このとき\(F(x)\)の連続性から、\(c\)のじゅうぶん小さな近傍で\(F(x) > 0\)となる。すると\(d < c\)かつ\(d\notin X\)となる\(d\)が存在することになり、これは\(c\)が\(X\)の最小上界であることに反する。

以上により\(F(c)=0\)であり、\(F(b) > 0\)から\(c\neq b\)、これと\(c\leq b\)から\(c < b\)である。■