有理数全体の集合は順序完備でない

有理数全体の集合を\(\mathbb{Q}\)とする。\(A=\{r\in\mathbb{Q}|r > 0\wedge r^2 < 2\}\)が\(\mathbb{Q}\)において上限\(c\)を持つと仮定し、\(c\in A\)と\(c\notin A\)のいずれを仮定しても矛盾が生じることを見る。

\(1\in A\)から\(c(\geq 1) > 0\)である。\(\displaystyle d=\frac{2-c^2}{2(c+1)^2}\)とおくと、\(\displaystyle 1-d=\frac{3c^2+4c}{2(c+1)^2} > 0\)から\(2c+d < 2c+1 < (c+1)^2\)である。また\(\displaystyle c+d=\frac{2c^3+3c^2+2c+2}{2(c+1)^2} > 0\)である。

\(c\in A\)と仮定すると、\(c^2 < 2\)から\(d > 0\)である。すると\((c+d)^2=c^2+d(2c+d) < c^2+d(c+1)^2 = (c^2/2)+1 < 2\)となり、有理数\(c+d\)は\(c\)より大きいにもかかわらず\(A\)に属している。これは\(c\)が\(A\)の上界であることに矛盾する。

\(c\notin A\)と仮定すると、\(c > 0\)と\(c^2\neq 2\)を考慮することにより\(c^2 > 2\)が得られ、したがって\(d < 0\)である。すると\( (c+d)^2=c^2+d(2c+d) > c^2+d(c+1)^2 = (c^2/2)+1 > 2\)となり、\(A\)の任意の要素\(r\)に対し\((c+d)^2 > 2 > r^2\)が成り立つ。いま\(c+d > 0, r > 0\)であるから\(c+d > r\)、したがって有理数\(c+d\)は\(c\)より小さいにもかかわらず\(A\)の上界となっている。これは\(c\)が\(A\)の上限(最小上界)であることに矛盾する。