モストフスキ同型写像の一意性

ゲーデルと20世紀の論理学』第4巻第2章(Web版
http://fuchino.ddo.jp/misc/goedel_et_logique_du_20e_siecle_4_I_2.pdf)定理2.17の前半、モストフスキ同型写像の一意性の証明を自分で書いてみた。教科書で行なわれている「後続点・極限点」といった場合分けは不要ではないかと考えている。

【定義】二項関係\(R\)を備えた集合\(X\)とその要素\(x\)に対し、\(\{y\in X\mid yRx\}\)を\(X_{Rx}\)と書く。

補題】\(R\)を\(X\)上の二項関係とする。\(\pi\)が\(\langle X, R\rangle\)から推移的集合\(\langle T,\in\rangle\)への同型写像であるとき、\(\pi[X_{Rx}]=\pi(x)\)が成り立つ。
(証明)\(\pi\)が同型写像であることから\(\pi[X_{Rx}]=T_{\in\pi(x)}\)である。いっぽう\(T\)は推移的集合であるから、任意の\(t\in T\)に対し\(T_{\in t}=t\)である。以上により\(\pi[X_{Rx}]=\pi(x)\)である。■

【定理】\(\langle X, <\rangle\)を整列集合とする。関係\(\in\)について\(X\)と同型な推移的集合は(存在すれば)一意である。
(証明)\(X\)から推移的集合\(T_1,T_2\)への同型写像\(\pi_1,\pi_2\)が存在すると仮定し、任意の\(x\in X\)に対し\(\pi_1(x)=\pi_2(x)\)であることを、\(X\)上の超限帰納法により示す。\(x\in X\)および「\(y < x\)なる任意の\(y\in X\)について\(\pi_1(y)=\pi_2(y)\)」を仮定すると、\(\pi_1[X_{ < x}]=\pi_2[X_{ < x}]\)である。すると補題により\(\pi_1(x)=\pi_2(x)\)である。■