20180527集合と位相ゼミの補足(ハミング距離)

命題\(P\)の真理値\(V(P)\)は\(1\)(真)あるいは\(0\)(偽)という値をとるものとする。すると\(P\rightarrow Q\)は\(V(P)\leq V(Q)\)と言い換えられる。また\(V(PとQの真偽が異なる)=|V(P)-V(Q)|\)である。\(V(a\neq b)\)のことを\(d(a,b)\)と書くことにす…

20180513集合と位相ゼミの補足

\(\mathcal{P}\)を集合\(X\)の分割とし、\(X\)上の二項関係\(x\sim y\)を\(\exists S\in\mathcal{P}[x\in S\wedge y\in S]\)と定義すると、\(\sim\)は同値関係である(証明略)。\(a\in X\)に対し同値類\(\{x\in X\mid x\sim a\}\)を\(C_a\)と略記する。【補…

20180506集合と位相ゼミの補足

\(f\)が単射とは限らないときの、\(f[\bigcap A_i]=\bigcap f[A_i]\)の反例。各\(A_i\)の、\(\bigcap A_i\)以外の点\(a_i\)たちから一斉に同じ点\(b\)に飛ぶ場合、像の共通部分をとっても\(b\)が「異物」として混入することがありうる。\(f\)を\(\mathbb{N}\…

20180429集合と位相ゼミの補足

(※内輪向けのメモです。)特性関数および「集合から特性関数への写像」が初めはイメージしにくいと思うので、解説を書いてみました。aさん、bさん、cさん、dさん、eさんという5人のグループがあって、とある勉強会に出席するかどうかを調査したところ、aさ…

20180422集合と位相ゼミの補足

(※内輪向けのメモです。) ・二項関係を初めて理解する際は、まずは最も素朴に二次元の表をイメージしておくのが良いと思います。 例えば\(X=\{グー,チョキ,パー\}\)として、関係\(aRb\)を「\(a\)が\(b\)に勝つ」とすると、その実体は\(R=\{(グー,チョキ),(…

20180414集合と位相ゼミの補足

(※内輪向けのメモです。) 発表者の証明を聞いて「ふんふん」と納得することと、実際に自分で証明を書いてみることの間には大きな壁があります。全部やるのは大変ですが、いくつかでも自分で書いてみることを勧めます。今日取り上げられていた、補題1.3.2の…

Nにおける∈の整礎性

\(N\)における∈の整礎性を、通常の帰納法で示す。\(N\)が順序をなす議論から独立して話を進めたいので、「\(\in\)極小元」といった語の代わりに、下のような語を用いる。 【定義】\(S\)が\(\neg\exists x\in S[x\in t]\)なる要素\(t\)を持つとき、\(t\)を\(S…

最小の帰納的集合は順序数である

【定義】対の公理と和集合の公理により、任意の集合\(s\)の各々に対して\(s\cup\{s\}\)なる集合が存在するので、これを\(s'\)と書く。すなわち\[r\in s'\Leftrightarrow (r\in s\vee r=s)\]が成り立つ。【定義】\(y\)が次の条件\(\varphi(y)\)を満たすことを…

各元を変えない元

集合\(S\)上に二項演算\(\cdot\)が入っている。以下\(x\cdot y\)を\(xy\)と略す。 \(x\in S\)に対し、\(xy=yx=x\)を満たす\(y\in S\)を「\(x\)を変えない元」と呼ぶことにする。ある元を変えない元は複数あるかもしれないし、存在しないかもしれない。また、…

開球の内点・外点・境界点

松坂和夫『集合・位相入門』p142~p143の「例」の証明を見通しよく書き直したもの。\(\mathbb{R}^n\)上の点\(a\)と正の実数\(\epsilon\)とに対し、\(a\)から距離が\(\epsilon\)未満の/に等しい/を超える点の集合をそれぞれ\(O_a^{\epsilon}\)と書くことに…

どうしても部分積分が苦手な人のために ~積分記号なしで積分する~

(前置き) \(f(x)\)の原始関数とは、\(f(x)=F'(x)\)を満たす\(F(x)\)のことである。例えば\[\cos x=(\sin x)'\]であるので、\(\sin x\)は\(\cos x\)の原始関数(のひとつ)である。つまり、与えられた関数を\( (\cdots)'\)の形に押し込めてしまえば、原始関…

線形代数ゼミ20171108の補足

(関係者向けのノートです。)●転倒数の定義の同等性の証明 \(\{1,2,\ldots,n\}=\{a_1,a_2,\ldots,a_n\}\)とする。任意の\(k=1,2,\ldots,n\)に対し、\(a_r=k\)を満たす\(r\)はただひとつ存在するから、これを\(c_k\)と書く。 \(\sigma\)をサイズ\(n\)の置換…

連続写像のさまざまな定義

発端はこのツイート。この(d)と(e)、双対だし自明に同値変形できるでしょと思ったができなかった(実はできるのか?) pic.twitter.com/6RWvOHijw9— 箱 (@o_ccah) 2017年10月7日位相空間\(X\)から位相空間\(Y\)への写像\(f\)について、次の2つはともに\(f\)…

二項関係を保つ/反映する写像

集合\(A,B\)が、それぞれ二項関係\(R,S\)を備えており、\(f\)を\(A\)から\(B\)への写像とする。 【定義】 任意の\(x,y\in A\)について\(xRy\rightarrow f(x)Sf(y)\)が成り立つとき、「\(f\)は関係を保つ(preserves)」あるいは「\(f\)は準同型写像である」と…

線形変換の冪の核に対して特徴的な基底

竹山美宏『ベクトル空間』16.2節に相当する議論。【補題0】\(U,V\)はベクトル空間、\(A,B\)は\(U\)の部分空間で\(A+B\)は直和であり、線形写像\(f:A\oplus B\to V\)は単射であるとする。このとき、\(f[A\oplus B]=f[A]\oplus f[B]\)が成り立つ。 (証明)\(f…

娘への手紙

「ある数を3倍しても、同じ数に10を足しても、結果は同じになりました。もとの数は何だったでしょう?」という問題を小学校1年生の娘に出した。娘は1から順に始めて「1×3=3、1+10=11だからダメ、2×3=6、2+10=12ダメ、……」と試してゆき、ほどなく5×3=5…

平方数でない自然数の平方根による、有理数の切断

デデキントによる議論を見通し良く。\(D\)を平方数でない自然数とし、\[A_1=\{x\in\mathbb{Q}\mid x\leq0\vee x^2 0\wedge x^2\geq D\}\]とする。\(A_1\)は最大元を持たず、\(A_2\)は最小元を持たないことを示す。\(x\in\mathbb{Q}\)に対し\(\bar{x}=x(x^2+3…

中間値の定理の証明・改

高木『解析概論』の中間値の定理の証明が理解しづらかったため、書き直した。同じ目的で 中間値の定理の証明 - y_bonten's blog を書いていたが、これも煩雑であったので改良した。【定理】(中間値の定理)\(a 区間\([a,b]\)において連続な関数\(F(x)\)につ…

キューネン数学基礎論p46、演習I.7.21

\(R\)が\(A\)を整列順序づけすることから\[\forall x,y,z\in A[xRy\wedge yRz\rightarrow xRz]\]\[\forall x,y\in A[x=y,xRy,yRxのうちちょうどひとつが成立する]\]\[\forall Y\subseteq A\exists y\in Y\neg\exists z\in Y[zRy]\]が成り立つ。\(X\subseteq …

キューネン数学基礎論p151、演習問題II.7.5

\(\mathfrak{A}\)を語彙\(\mathcal{L}\)に対する構造とし、その台集合を\(A\)とする。\(\mathcal{L}\)の項\(\tau\)に対し、「\(\tau\)に対する\(A\)への任意の割り当て\(\sigma',\sigma\)について、\(\sigma'\upharpoonright V(\tau)=\sigma\upharpoonright …

小数表示と実数

有理数の切断によって実数を構成したとする。任意の小数表示に対して、「それによって表される実数」が存在することを示す。一意性についての議論は省略する。以下、切断\( (A,B)\)の下組\(A\)(最大元を持たない)を指して「切断」という。有理数\(r\)に対…

梵天ゆとりがレビューに参加した作品一覧

『数学ガール/ポアンカレ予想』結城浩 @hyuki 著、SBクリエイティブ数学ガール/ポアンカレ予想 (「数学ガール」シリーズ6)作者: 結城浩出版社/メーカー: SBクリエイティブ発売日: 2018/04/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る『魅了する無…

有理数の切断によって構成した実数は、確かに切断公理を満たす

【定義】「\(\mathbb{Q}\)の切断」とは、以下をすべて満たす\(B\)をいう。 ・\(\varnothing\subsetneq B\subsetneq\mathbb{Q}\) ・\(B\)は最大元を持たない ・\(\forall x\in B\forall y\in B^c[x 有理数\(r\)に対し、「\(r\)未満の有理数全体」なる集合を\(…

『Henle集合論』定理6.13

『Henle集合論』定理6.13の証明を書いてみた。【定理】\( (B, 全単射が存在する。 (証明)整列集合\( (B, 再帰的定義により、順序数全体のクラスを定義域とする関数クラス\(g\)を次のように定める。ただし、\(g[\alpha]\)は\(g\upharpoonright_\alpha\)の値…

再帰定理・改

再帰定理 - y_bonten's blogを簡明に改良した。『数学のロジックと集合論』p77、定理2.10の証明を、自分で書き直してみた。\(m\in\mathbb{N}\)と写像\(g:\mathbb{N}\to\mathbb{N}\)が与えられている。\(k\in\mathbb{N}\)ごとに条件\(\psi_k(h)\)を「\(h\)が…

モストフスキ同型定理

【補題1】推移的集合\(T\)において関係\(\in\)が推移律を満たすとき、\(T\)の要素はすべて推移的集合である。 (証明)\(x\in y\in z\in T\)と仮定し、\(x\in z\)を導く。\(T\)が推移的集合であることから\(y\in T\)、さらに\(x\in T\)である。すると\(T\)に…

国際言語学オリンピックの問題

のらんぶるさん紹介の国際言語学オリンピックの問題の別解をメモしておく。自分で解きたい人は読まないでください。 上質の言語パズル!言語学の知識不要,「国際言語学オリンピック」が面白い - のらんぶろぐ X (以下、ネタバレ注意) 「taluは『2倍』の意…

関数の超限再帰的定義

任意の集合\(x\)の各々に対し、ただひとつの集合\(G(x)\)を返す規則\(G\)が与えられている*1。順序数\(\alpha\)ごとに、条件\(\psi_\alpha(f)\)を「\(f\)は\(\alpha\)を定義域とする関数であり、任意の\(\beta\in{\rm dom}f\)について\(f(\beta)=G(f\upharpo…

関数の超※★帰的定義・改

※このエントリの内容は古くなっています。より簡明な証明が 関数の超限再帰的定義・改の改 - y_bonten's blog にあります。前エントリの\(\psi_\alpha(f)\)における\(f\)の定義域を「\(\alpha\)未満」から「\(\alpha\)以下」に変更し、証明を簡素化したもの…

関数の超※★帰的定義

※このエントリの内容は古くなっています。より簡明な証明が http://y-bonten.hatenablog.com/entry/2016/05/19/060644 にあります。任意の集合\(x\)の各々に対し、ただひとつの集合\(G(x)\)を与える規則\(G\)が与えられている。規則\(G\)の実体は、\(\forall…