20190508『現代数理論理学序説』輪講のノート

(※内輪向けのメモ書きです。)

以下、真偽値を\(1\)(真)・\(0\)(偽)で書くことがあります。

●問題1.4.1(\(\neg,\wedge,\leftrightarrow\)の真理表を作れ)について:
我々はこれらの真理表を常識的に知ってしまっているので見過ごしがちですが、本書においては論理結合子をすべて\(\supset\)に帰着させる方針をとっているので、結果は自明ではありません。結合子の定義と\(\supset\)の真理表を用いて、各々の真理表を「導き出す」ことが必要になります。とはいえ、実際には望みどおりの真理表になるように各結合子の定義を選んでいるのであり、この問題は「確かにあの定義でよろしい」と確認する作業をしているとも言えます。

●1.4.2節、「\(f\)の定義2.の両辺に現れる\(\supset\)は意味が異なる」という話について:
\(f(\alpha\supset\beta)\)の\(\supset\)は論理結合子、\(f(\alpha)\supset f(\beta)\)の\(\supset\)は真偽値の2項演算子です。1.の\(f(\perp)=\perp\)における\(\perp\)も、それぞれ「論理記号」と「真偽値の定数」という、同様の区別があります。このことを分かりやすくするために、\(f\)の定義を以下のように書き直すことができます。
\(V=\{0,1\}\)として、写像\(g:V\times V\to V\)を\[\begin{array}{l}g(1,1)=1,\\g(1,0)=0,\\g(0,1)=1,\\g(0,0)=1\end{array}\]で定義しておく(\(g\)は\(\supset\)の真理表を与える)。命題変数の付値(命題変数の全体から\(V\)への写像)を定めた上で、論理式の全体から\(V\)への写像\(f\)を、次のように再帰的に定義する。\[\begin{array}{l}f(\perp)=0,\\f(命題変数)=(その命題変数の付値),\\f(\alpha\supset\beta)=g(f(\alpha),f(\beta))\end{array}\]

●問題1.4.3(\(\rm HK\)の公理がトートロジーであることを示せ)について:
部分論理式ごとに欄を設けて真理表を書くときわめて繁雑な作業になりますが、論理式全体を一度だけ書いて、結合子の下に真偽値を書いてゆくとかなり楽になります。

●問題1.4.5(\( (p\supset r)\supset(((q\supset r)\supset r)\supset r)\)がトートロジーでないことを示せ)について:
\(\supset\)の反例を見つけるには、前件が真、後件が偽となる場合を探すと早いです。まず外枠を見ると、
・\( (p\supset r)\):真
・\( (((q\supset r)\supset r)\supset r)\):偽
がともに成り立っていればよいことが分かります。さらに分解すると
・\( (p\supset r)\):真
・\( ((q\supset r)\supset r)\):真
・\(r\):偽
\(r\)が定まったので代入して書き直すと
・\( (p\supset 偽)\):真
・\( ((q\supset 偽)\supset 偽)\):真
・\(r\):偽

・\(p\):偽
・\( (q\supset 偽)\):偽
・\(r\):偽

・\(p\):偽
・\(q\):真
・\(r\):偽
と求まります。

(脱線)後件の\( (((q\supset r)\supset r)\supset r)\)の真理表を書いてみると分かりますが、実はこれは\(q\supset r\)の真理表と一致します。つまり全体としては\( (p\supset r)\supset(q\supset r)\)と同値であり、トートロジーになるはずがないことが見えやすくなります。

(脱線の脱線)なぜ\( (((q\supset r)\supset r)\supset r)\)と\(q\supset r\)は同値なのか?(直感的に):
\(q,r\)の真偽の組合せを教科書と同じ順に4行に並べて考えると、\(q\supset r\)は「2行目が排除される」という意味だと解釈できます。すると\( (q\supset r)\supset r\)は「2行目を排除すると、1・3行目しか残らない」という意味になります。これはつまり「4行目が(すでに)排除されている」というのと同じことであり、\( (\neg q)\supset r\)とも\(q\vee r\)とも書けます。この末尾に、さらに\(\supset r\)をつけたものが問題の論理式で、今度は「4行目を排除すると、1・3行目しか残らない」という意味になり、結局「2行目が排除されている」、つまり\(q\supset r\)に戻ってきます。

●問題1.4.6について(直感的に):
\(\alpha\supset\beta\)の反例は「院試に合格したにもかかわらず学部を卒業できなかったために大学院に入れない」という状況であり、\(\alpha\)という規定だけではこのような悲劇を避けることはできないので、確かに\(\alpha\supset\beta\)は証明できそうもありません。