20190515『現代数理論理学序説』輪講のノート

(※内輪向けのメモ書きです。)

●定理1.4.7(LKの完全性定理)の証明について:「2.\(\Theta\)に\(\supset\)が現れるとき」の
(1)\(f(\alpha\supset\beta)=f(\alpha)\supset f(\beta)=\top\supset\bot=\bot\)
(2)\(f\)は\(\Gamma\rightarrow\Theta\)の反駁になっている
の箇所の解説を聞き漏らしてしまったので、私の理解をメモしておきます。

(1)付値\(f\)は\[\alpha,\Gamma\rightarrow\Lambda,\beta\]の反駁なので、反駁の定義(p54)から、\(\Gamma\)に属すすべての論理式および\(\alpha\)の真偽値を\(\top\)にし、同時に\(\Lambda\)に属すすべての論理式および\(\beta\)の真偽値を\(\bot\)にします。したがって\(f(\alpha)=\top\)であり\(f(\beta)=\bot\)です。これと「\(\supset\)」の真理表(p52)から冒頭の等式が成り立ち、\(f(\alpha\supset\beta)=\bot\)を得ます。
(2)\(\Theta=\Lambda\cup\{\alpha\supset\beta\}\)であり、\(f\)はもともと\(\Lambda\)の論理式をすべて\(\bot\)にする付値でしたが、(1)で\(\alpha\supset\beta\)をも\(\bot\)にすることが分かりましたから、\(\Theta\)の論理式をすべて\(\bot\)にします。また\(f\)が\(\Gamma\)の論理式をすべて\(\top\)にすることも既に見たとおりなので、再び反駁の定義から\(f\)は\(\Gamma\rightarrow\Theta\)の反駁になっています。

●問題1.4.9、「HKにおいて各公理系が独立ならば、HJにおいても独立である」ことの証明について:できるだけ「明らか」と感じてもらえるように説明してみました。

「HKにおいて公理型Sは独立である」の(教科書で直接与えられた)定義は「公理型K,A,Pおよび推論規則MPでは証明できないが、これらに公理型Sを援用して初めて証明できる論理式が存在する」です。このような論理式が存在するとき、そのひとつを\(\alpha\)とすると、\(\alpha\)の証明図にはSに直接マッチする論理式\(\beta\)が上端のどこかに登場しているはずです。そして、\(\beta\)自身も「このような論理式」のひとつになります。したがって上記の定義を
「Sにマッチする論理式で、公理型K,A,Pおよび推論規則MPでは証明できないものが存在する」と差し替えても同値です。これを否定すると「Sにマッチする論理式はすべて公理型K,A,Pおよび推論規則MPで証明できる」となり、こちらは「SはHKにおいて独立でない」の定義となります。

同様に、「HJにおいて公理型Sは独立である」とは
「Sにマッチする論理式で、公理型K,Aおよび推論規則MPでは証明できないものが存在する」ことです。

両者を比較すると、前者を満たすような論理式は必ず後者も満たす(Pがあっても証明できない道具立てから、さらにPを抜いて証明できるはずがない)ことから、公理型SはHKにおいて独立ならばHJにおいても独立であることが言えます。

以上と同様のことが各公理型について成り立つので、「HKが独立ならば、HJにおいて公理型S,K,Aはいずれも独立である」ことが分かります。

●定義2.1.1(項の定義)、「ポーランド記法では括弧が不要」という話について:例えば\(a+(b\times c)\)と\( (a+b)\times c\)はそれぞれ「\(+a\times bc\)」および「\(\times+abc\)」と書かれます。\(+,\times\)のアリティが2であることさえ分かっていれば括弧なしで明瞭に区別されます。教科書もこれと同じ流儀で関数記号を用いています。