絹田村子『数字であそぼ。』6巻、服薬管理法の問題

絹田村子『数字であそぼ。』第6巻、服薬管理法の問題の解説。

前提:
(1)おじいちゃんは1日1種類、1錠だけの薬を飲んでおり、内服時刻に制約はない。とにかく同じ日に1錠飲めばよい。
(2) おじいちゃんは「今日、もう薬を飲んだか、まだ飲んでいないか」を忘れることがあるので、これを解決したい。
(3)(2)以外の障壁は存在せず、おじいちゃんは日付を正しく認識し、決められた手順に従うことができる。特に、「そもそも薬に向き合うことなく、飲むのを忘れたまま翌日を迎える」という事故は発生しない。

この問題の核心となるポイントは、何らかの方法で「もう飲んだ」/「まだ飲んでない」というフラグを立てたとしても、それが今日に関する情報なのか昨日に関する情報なのか判別できなければ役に立たない、という点である*1。例えば板の表裏に「未」「済」と書いておき、服薬のたびに「未」から「済」に裏返す習慣をつけたとしても、日付が変わる瞬間に誰かが「済」から「未」に戻してくれなければ、翌日に内服し損ねることになる。

そこで、服薬後に立てた「済」のフラグが、日付が変わった瞬間に自動的に「未」に戻るようなシステムが必要になる。といっても午前零時に何かアクションを起こす必要はない。例えば、板の表裏に書く文言を「偶数日済/奇数日済」としておき、内服後に裏返すようにすればよい。これで奇数日に「偶数日済」を見れば、今日はまだ内服していないことが分かる。

作品内で彼らが編み出した方法は、これと同じことを薬そのものを使って実現している。すなわち、「服薬後に、きょうの日付と偶奇が食い違うような個数の薬を瓶に入れておく」という方法である。そして「きょうの日付と個数の偶奇が食い違えば『済』、一致すれば『未』」とみなすことにしておけば、当日中は「済」であったフラグが翌日には「未」という意味に変わる。具体的には、偶数日の内服後には1個、奇数日の内服後には2個の薬を入れている。

ただし、月替わりだけは同じ偶奇の日が連続するおそれがあるので、「末日の内服後には3個入れておく」「3個の薬を見たときには、月末ならば『済』、月初ならば『未』とみなす」という最優先特別ルールにしておく。

この方法を続けると、おじいちゃんはいずれ「(未/済の判断のうえで)瓶から1錠とって飲んだあと、まだ薬が残っていれば放置、空になれば2個補充」という習慣になることだろう(月末日を除く)。「2個補充」では偶奇は変わらないので、要するに「薬を1錠飲む」という行為自体が偶奇をひっくり返していることになる。

*1:したがって「●月▲日は内服済」とまで記録すれば解決するが、これでは服薬カレンダーと同じ方法になってしまい、おじいちゃんのプライドが許さない。