20201007『数理論理学』輪講のノート

戸次大介『数理論理学』輪講後のコメントです。※内輪向けです。記号は私の好みのものに置き換えています。

●p5練習問題1.16
――最後の例は煩雑に見えますが、理論的背景のある集合です。\(X_0=\varnothing\)から初めて\[X_1=X_0\cup\{X_0\},\]\[X_2=X_1\cup\{X_1\},\]\[X_3=X_2\cup\{X_2\},\]\[\vdots\]というふうにどんどん集合を作ってゆくと、\(X_4\)はどうなるでしょうか。「自然数集合論的定義」などのキーワードで調べてみてください。

●p3~p4解説1.5
――\(a\in X\)を「\(X\)は\(a\)を含む」と読むことは確かにありますが、むしろ\(A\subseteq X\)を「\(X\)は\(A\)を含む」と読むことが多く、「含む・含まれる」という語は混乱のもとになりがちです。私は\(a\in X\)を「\(X\)は\(a\)を要素に持つ」、\(A\subseteq X\)を「\(X\)は\(A\)を包含する(つつむ)」などと呼び分けています。

●p5定義1.17、p6定義1.20、定義1.22
――\(X\subseteq Y\)は\[すべてのzについて「z\in Xならばz\in Y」が成り立つ\]\[「z\in Xかつz\notin Y」となるzが存在しない\]\[X\backslash Y=\varnothing\]
など、いろいろな(互いに同値な)定義の書き方があります。\(X\subsetneq Y\)も、例えば\[X\subseteq YかつX\neq Y\]でも\[X\subseteq YかつX\nsupseteq Y\]でも同値です。

●p6練習問題1.24
――発表ではやや感覚的に解かれていましたが、本来は上記の定義に従って論証する必要があります。例えば\(X\nsubseteq Y\)を言うときには、\(X\)に属すが\(Y\)には属さないものをひとつ証拠として提示するのが良いです。

・\(\{1\}\subseteq\{\{1\}\}\):\(1\)は左辺に属すが右辺には属さないから(右辺の要素は\(\{1\}\)のみ)、これは誤っている。
・\(\{1\}\subsetneq\{1,1\}\) :\(\{1\}\ni 1\)、つまり右辺の要素はすべて左辺にも属すから、これは誤っている。(※このことは\(\{1\}\supseteq\{1,1\}\)が成り立つことを意味しており、「誤っていること」の根拠としては足りている。ちなみに\(\{1\}\subseteq\{1,1\}\)も成り立っており、結局\(\{1\}=\{1,1\}\)である。)
・\(\varnothing\subseteq\{1\}\):「左辺に属すが右辺には属さないもの」は存在しないから、これは正しい。
・\(\{1,2\}\subseteq\{\{1\},\{2\}\}\):\(1\)は左辺に属すが右辺には属さないから、これは誤っている。(※\(2\)を根拠にしても構わないが、ひとつ挙げれば足りる。)
・\(\{1,2\}=\{2,1\}\):左辺の要素である\(1\)および\(2\)はともに右辺にも属すから、\(\{1,2\}\subseteq\{2,1\}\)が成り立つ。同様に、右辺の要素である\(2\)および\(1\)はともに左辺にも属すから、\(\{1,2\}\supseteq\{2,1\}\)も成り立つ。以上により、これは正しい。
・\(\varnothing=\{0\}\):\(0\)は右辺に属すが左辺には属さないから、これは誤っている。(※\(\varnothing\subseteq\{0\}\)だが\(\varnothing\nsupseteq\{0\}\)である。)
・\(\varnothing=\{\varnothing\}\):\(\varnothing\)は右辺に属すが左辺には属さないから、これは誤っている。(※\(\varnothing\subseteq\{\varnothing\}\)だが\(\varnothing\nsupseteq\{\varnothing\}\)である。)

●p7定義1.28、定義1.30
――教科書では補集合の定義のあとに差集合(相対補集合)が定義されていましたが、差集合を先に定義し、「全体集合(議論領域)を\(U\)としたときの\(U\backslash X\)のことを\(X\)の補集合\(X^\complement\)と呼ぶ」と定義することもできます。全体集合をそのつど明記するのであれば補集合の記号は必要ありませんが、文脈から明らかな場合には全体集合が省略され、補集合が意味をなすのです。

以下は次回取り扱う予定の範囲です。
●p10~p11(1.8節「関係」)
――教科書の記述に問題があるので、以下のように読み替えてください。
・定義1.60で同値関係を等号で表していますが、ここは\(\sim\)など、ほかの記号だと思ってください。
・定義1.63における「同値関係が定義されている」という前提を削除してください。
・定義1.63の反対称律に出てくる等号は、「集合の要素として同一である」という、通常の等号の意味で理解してください。

●教科書には半順序関係の具体例が書かれていないので、発表ではいくつか挙げてみてもらえるとありがたいです。